吉村洋文・大阪府知事(46)のコロナ対応は、2020年8月に行なった「イソジン会見」はすぐに撤回、国産第1号となるはずだった「大阪ワクチン」の開発も2021年末に最終段階の治験を断念、防護ガウン代わりに供出を呼びかけ、さらに21万6700着を購入した「雨合羽」は約5万着がまだ残っている。こうした吉村氏のパフォーマンスを評価する府民もいるが、結果的に府のコロナ対策を混乱させてきたことは間違いない。
吉村氏に近い府議はこう見る。
「吉村さんにとってコロナ対策は知事デビューなんです。若い子が高校デビューで髪型など外見を変えて急にモテ出すように、コロナが始まったらにわかに注目された。彼は他の知事と比べても『伝える力』が秀でているのが長所ですが、半面、自分の評価をすごく気にする人でもある。批判的なことが書かれていたら、ちょっとしたネット記事でも反応し、改めますと朝令暮改してしまう。担当部局にすれば、ちゃんとした理由があってやっているのに、知事が改善すると言えば自分たちが完全に悪かったことにされてしまう」
現実に府の役人たちは吉村氏の場当たり方針に右往左往させられている。大阪府関係職員労働組合(府職労)の小松康則・執行委員長の話だ。
「知事は最近も保健所の業務の一部を民間業務委託することをトップダウンで決めた。これは業務の軽減にはなるかもしれないが、一方で医療機関との連絡調整、患者さん対応など切り分けられない業務もある。現場に相談もなく決めて短期間でやれと言われているので、その対応と準備に追われて大混乱しています」
大阪市立十三市民病院を「コロナ専門病院にする」と決めた時も、事前に担当部局との打ち合わせがなかったために大混乱したことが報じられた。
これでは職員の不満が溜まるはずである。
独断府政の極めつきは、住民投票で2回否決された「大阪都構想」の推進だろう。大阪府と大阪市は2021年、市の都市計画などの事務を府に委託する「広域行政一元化条例」を制定。府と市の事実上の一体化をはかる“簡易都構想”とも呼ばれる。自民党大阪府連総務会長の川嶋広稔・大阪市議が問題を指摘する。
「住民投票の否決という民意を無視した条例だが、なにしろ突然の提案で市議会でも府議会でも満足な議論がないまま維新と公明の賛成多数であっという間に議決されてしまった。これでは維新独裁体制に等しい」
大阪の巨大与党の維新に守られた吉村知事だが、足元に火がついている。
※週刊ポスト2022年4月8・15日号