日本初の女性総理候補と目される政治家たちの本音を聞く連続インタビュー。第3弾に登場するのは、過去に何度も断念した自民党総裁選に昨年やっと出馬を果たした野田聖子・男女共同参画担当相(61)だ。「週刊ポスト」の新シリーズ《女性総理、誕生!》から飛び出したスピンアウト企画。第1弾(高市早苗氏)、第2弾(稲田朋美氏)に続き、ノンフィクションライターの常井健一氏が斬り込んだ。【全5回の最終回。第1回から読む】
――これまで(第1~4回)のインタビューを総合すると、野田さんが影響を受けた政治家というのは男性ばかりですね。
「だって、私が初当選するまでの13年ぐらいは自民党の衆院議員に女性がいなかったんですよ」
――一方、当時の社会党では土井たか子さんが大勢の「マドンナ議員」を引っ張っていました。
「結局、女性議員のロールモデルは(土井さんのように)短髪で男性みたいで、結婚しないという時代。基本的に“偽男”にならないとダメだったので、私が髪を伸ばすようになったのは夫と再婚した2010年以降ですよ。夫に『おっさんといるみたいだから、せめて髪を伸ばして、パーマをかけて』って言われたの。夫婦なのに部活の合宿みたいだって」
――毎日が部活動(笑)。森山真弓さん(女性初の官房長官)は同じ自民党河本派に属していましたね。
「森山先生は私の初当選当時は参院議員でしたが、お師匠です。夫婦別姓を唱えることが『ふしだら』と言われた時代からの第一人者ですが、いつもサバサバしていて、私が『理解されなくて悔しいですね』って言ったら、『まあ、憲法だって改正されないし、そんな簡単に行かないから』って言う人でした。
村上正邦(通称「参院の天皇」)という鬼のような“ザ・おじさん議員”にいじめられても、『しゃあない、しゃあない』と言って気にしない。森山先生がご生前のうちに夫婦別姓を実現したかったんだけどね……」
――高市早苗さんはサッチャー(女性初の英首相)をよく取り上げますが、野田さんと同じ世代の女性のリーダーにはサッチャー信奉者が多いですね。
「当時は有名な女性政治家はサッチャーさんしかいなかったから、それだけのこと。私も好きと言ったら、ベストセラーを書いた高名な文筆家の女性に叩かれたんですよ。サッチャーは冷血で、こんな政治をやって、こうしたって。男性議員が『徳川家康を尊敬している』と言った時、同じように突っ込まれるかな?」
――あぁ、確かに。その作家ってどなたですか。
「それはナイショですが、この国は女性の文化人が女性に対して厳しすぎると思うの。平気でくさす。もうちょっとゆとりを持って、女性議員の数を増やすことを手伝ってほしいなと思います」
――小池百合子さんは過去に「おじさん政治の脱却」を訴えました。発想のベクトルが逆ですね。
「いや、わが家では私がおじさんって言われているから(笑)。子ども産んで、母親やっているけど、実情は『おじさん』と同じで、毎日働きに行って、給料もらって、家賃や光熱費を払って、これだけやっているのに伴侶から『ありがとう』も言ってもらえない。『疲れた』と言うと、『オレだって』と言われる。このポジションって『おじさん』そのものです。
だから、働く女性はおじさんと共有するところが多々あって、実は対立点が少ない。むしろ、おじさんが気の毒だと思う。年功序列で、偏差値や学歴も気にして、自分の行きたい道に行けず、組織の一員として肩書きだけもらって、ずるずる会社人生を終えたら、夫力も父力も発揮できなくて社会から孤立する」