ライフ

“戦争報道ストレス”にどう対応すべきか 専門家が解説

リアルタイムで無加工の情報も届くSNS時代。戦地からの報告をどう受け止めるべきか(Getty Images)

SNSの普及により無加工の情報に接する機会も増えている(写真はイメージ。Getty Images)

 ロシア軍によるウクライナ侵攻から1か月あまりが経過した。テレビでは連日のように戦地の状況が報道され、SNSでも映像が拡散されている。他方でこうした悲惨な映像や報道に接し続けることで、直接的に侵略の被害を受けているわけではないものの、精神的にストレスを抱えてしまったという人も少なくないようだ。SNSが普及した今の時代、どのような点に気をつけて戦争報道と向き合うべきだろうか。ストレスを感じてしまった場合の対処法を含めて、専門家に聞いた。

 2月24日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が隣国ウクライナへの“特別な軍事作戦”を実施することを公表し、ロシア軍によるウクライナへの全面的な侵攻が始まった。ウクライナは徹底抗戦し、解決の糸口が見えないまま1か月が経過。この間、日を追うごとに戦況は悪化し、軍同士の戦闘にとどまらず、民間人を巻き込みながらマンションや病院、ショッピングモール、劇場、美術館、さらには原子力発電所まで攻撃に曝されてきた。

 日本国内では戦地の状況が連日テレビやニュースサイトで報じられ、民間人が攻撃を受けたり他国へと避難したりする様子が伝えられてきた。それだけでなくSNSでは現地の人々が自主的に撮影した映像や無加工の動画も拡散しており、パソコンやスマホを開けば即座に戦争の実態が目に飛び込んでくると言ってもいい状況だ。

 こうしたメディア環境下で、悲惨な報道に接し続けて精神的ストレスを抱えてしまったという声も出ている。ネット上では「戦争の映像を見るとつらい気持ちになる」「自分が無力で苦しい」「本当は目を背けたいのに、ついついニュースをチェックしてしまう」といった声が相次いでいる。

 ロシア軍の侵攻によって日々命の危険が脅かされ、生活が理不尽に奪われ、身体的にも精神的にも傷ついているウクライナやロシアの人々と比べれば、報道に接してストレスを感じることは瑣末なことかもしれない。だが、戦争報道から強い精神的苦痛を受け、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の発症につながる場合もある。

 福島県立医科大学特任准教授で「プリンシプル職場の心理学研究所」の八木亜紀子所長が解説する。

「テレビのハイビジョンで見る異常なまでに鮮明な避難の様子や、爆撃の衝撃で吹き飛ばされるスマホの動画を見て、胸が締めつけられたりざわざわしたりする経験をしている人は少なくないでしょう。最近では、テレビやゲーム、SNSなどを視聴することでもストレス症状が悪化しPTSDを発症しうる、といった研究も進んできています」

 もちろん、個人差はある。心療内科医の海原純子氏は、「とりわけ共感力や想像力が高いと精神的な不安・苦痛を感じやすい」と指摘する。

「ニューヨークの同時多発テロでは、テレビで繰り返される報道を見ただけでPTSDに陥った方が多かったという報告があります。共感する力や想像力が強い方では、影響を大きく受けるリスクがあるといえます」(海原医師)

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン