この春、皇族ではめでたい話が続いた。昨年12月に20才になられた天皇家の長女・愛子さまが3月17日に初めての記者会見に臨まれ、同じ日は秋篠宮家の長男・悠仁さまがお茶の水女子大学附属中学校の卒業式に出席された。それぞれ節目となる時を迎えられたのだ。
愛子さまと悠仁さまにとって残酷なのは、定められたはずの運命が、土壇場で逆転する可能性があるということだ。2004年、皇族に男子が生まれないことに危機感を抱いた小泉政権は、「皇室典範に関する有識者会議」を立ち上げ、2005年に「女性・女系天皇を認めて、皇位継承順位は男女を問わず第1子を優先する」との報告書が提出された。「愛子天皇」の実現が、限りなく近づいていたのだ。
しかし翌年に悠仁さまが誕生されたことにより、議論は止まった。だが、それで皇室の先細り問題が解決に至ったわけではない。現在、未婚の女性皇族は愛子さまと佳子さま、三笠宮家の彬子さまと瑶子さま、高円宮家の承子さまの計5人だ。この方たちが結婚されて民間人となれば、皇室に残るのは悠仁さまだけとなる。
この危機的状況に、昨年12月、政府の有識者会議が最終報告書を取りまとめた。「女性皇族が結婚後も皇室に残る案」と、「戦後に皇籍離脱した旧宮家の男系男子が養子縁組などで皇籍復帰する案」の2案が軸となっている。皇室制度史に詳しい京都産業大学名誉教授の所功さんは、「現実的で長期的な観点が必要」と語る。
「戦後にできた皇室典範を70年以上も放置してきたツケがいま回ってきています。今後2代先までは男系男子での皇位継承が可能です。しかし、悠仁さまが結婚されても男子を授かるとは限りませんから、その先は、男系男子『限定』ではなく『優先』とし、少なくとも男系女子の即位は公認するべきです」
憲法学者の木村草太さんが続ける。
「ここまで皇族数が少なくなるまで議論を進めなかったのは国民の責任でもあります。この先の天皇制にはさまざまな意見があるでしょうが、女性天皇や女系天皇を否定する理由はないと思います。天皇の持つ伝統的な権力をコントロールするために血筋が求められるとしても、性別は絶対的な条件にならないはずだからです」