およそ1か月ぶりに解放されたウクライナの首都・キーウ(キエフ)近郊の街。現地に入った英BBCら海外メディアの記者たちは言葉を失った。静かな並木道には、ロシア軍に殺害されたとみられる民間人の遺体が散乱する。手足を縛られ、無抵抗のまま射殺されたと思しき亡骸もある。
ある記者はさらに衝撃の光景に出くわした。
「子供がいるんだ!」
3月初旬、両手を挙げてロシアの戦車にそう叫んでいたウクライナ人夫妻と思われる遺体が、黒焦げになって横たわっていたのだ――。
ロシアによるウクライナ侵攻の開始から40日あまり。次第に明らかになるロシア軍の非道行為に国際世論が強く反発し、戦争犯罪人としてプーチン氏を非難する声は日増しに高まっている。国際関係アナリストの北野幸伯氏が語る。
「当初、ロシアは数日でキーウが陥落すると想定していましたが、ゼレンスキー大統領は逃亡せず抵抗を続けた。さらにウクライナ軍には家族や同胞、母国を守るとの絶対的正義があるが、ロシア軍は何のための戦争か分からず士気が低い。欧米からウクライナへ武器や軍事情報の支援も相次いでいる。そのため侵攻は思うように進んでいない」
親露派のはずの中国も表立った支援はせず、態度を曖昧にしている。
孤立を深めるばかりのロシアだが、国際社会の逆風をものともせずプーチン氏に急接近している国がある。北朝鮮だ。
「共に帝国主義者たちを叩きつぶす」――3月17日、北朝鮮政府の機関紙・民主朝鮮は、北朝鮮とロシアの連帯を強調する論評を掲載しつつ、こう述べたのだ。折しもこの日は、北朝鮮と旧ソ連が1949年に経済、文化分野の協力を定める条約を締結して73年となる記念日だった。コリア・レポート編集長の辺真一氏が語る。
「現在もロシアと北朝鮮は水面下で支援について協議を重ねていると見られています。中国は欧米からの経済制裁を懸念して表立ったロシア支援ができないが、過去に国連安保理から10回以上も制裁された北朝鮮は制裁が痛くも痒くもない。
4月24日には金正恩総書記の訪露3周年の記念日を迎える。この日を機に北朝鮮とロシアは戦略的関係性をいっそう強化する可能性が高い」