2人のファイトマネーが20億円──日本ボクシング史上最大のビッグファイトとなる国際ボクシング連盟(IBF)世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン、40)と世界ボクシング協会(WBA)世界同級スーパー王者村田諒太(帝拳、36)の統一戦が、4月9日にさいたまスーパーアリーナでゴングが鳴る。その一戦を感慨深い思いで待ちわびる人物がいる──。
ゴロフキンは2004年アテネ五輪銀メダリストで、プロ入り後は17連続KO防衛の世界タイ記録を持ち、23連続KO勝利を含めてプロ戦績は41勝(36KO)1敗。これに対し村田は2012年ロンドン五輪金メダリストで、プロ戦績は16勝(13KO)2敗である。KO率85.7%のゴロフキンとKO率72.2%の村田がぶつかり合う。
この両者をアマチュア時代から知る人物がいる。一般社団法人日本ボクシング連盟第12代目会長の山根明氏である。ゴロフキンは2001年に大阪で開催された東アジア大会で来日。この大会を取り仕切っていたのが山根氏だったが、その後も国際大会で強さを目の当たりにしてきた。村田はロンドン五輪で山根氏と二人三脚で48年ぶりに金メダルを獲得したことで、連盟の将来の幹部候補として海外留学などの英才教育を施そうとしていた。
ところが、村田は水面下でプロ転向を進めていたことが報道で判明し、両者の間に溝ができた。日本ボクシング連盟はこの行為が進路決定をめぐる信義則違反として、村田に対してアマチュア選手としての引退勧告を決議。その後、プロに転向するという経緯があった。“男・山根”は両者の対戦をどうみているのか聞いてみた。
「諒太(村田)は精神的に弱いので国際大会には出さないという理事もいたが、強化委員長として村田の素質はわかっていたので、国際大会に送り出した。五輪でメダルを獲ったことでその正しさが証明されたわけだが、アマチュア時代の諒太は“会長が会場にいらっしゃるだけで負ける気はしません”と話していたこともあった。
その後、いろんなことがありましたが、今は諒太にはこれまでのプロボクシング界を変えてもらいたいと思っている。他のスポーツは余力を残して引退することが多い。ところが、どんなに強いプロボクサーでも、最後はタイトルを防衛できずにボロボロになって引退に追い込まれることばかり。ボクシングには強いチャンピオンのままでの引退がない。もちろん引退は諒太やジムの会長が決めることだが、50年以上ボクシングに関わってきて、常にそういう思いをしてきた者として、諒太にそれをやってほしいと思っている」
では村田はゴロフキンに勝てるのだろうか。山根氏の見方はこうだ。