ウイルスは変異株が出るたびにワクチンの効果は下がり、オミクロン株もデルタ株と比べてワクチンの効果は低いと報告されている。すでに国内でもオミクロン株の変異株「BA.2」が相次いで確認され、感染力はオミクロン株よりも強いとされている。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう語る。
「そもそも小児接種は成人接種と比べて圧倒的に研究が足りていません。ワクチンの適切な量についての研究も進んでいません。今は成人の3分の1ですが、5歳と11歳では体格差が大きく、本来は体重ごとに定めるのが理想です。こうした状況で新たな変異株が流行していくと判断はさらに難しくなっていく」
日本小児科医会が1月19日に発表した「5~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種にあたって」と題した提言には、こう書かれている。
「本ワクチンの効果は感染予防のためというよりは、むしろ発症時の重症化予防のためのワクチンとの意味合いが大きいことから、そもそも重症化することが稀な小児期の新型コロナウイルス感染症においてのワクチン接種の意義は成人・高齢者への接種と同等ではないと言える」
小児への接種は成人と同列には扱えないということだが、高橋医師が懸念するのは、重症化だけではない。コロナ感染による後遺症の問題だ。
「コロナ感染症から回復しても、そのあと『ロング・コビッド』と呼ばれる長期の後遺症が出ることがある。3か月以上、頭痛や頭にもやがかかったような症状に悩まされる。私は外来で、コロナに罹患した子供たちから、1か月経っても頭痛が酷いとか、考えがまとまらないといった症状で相談を受けています。
英国健康安全保障局の調査によれば、成人に関してですが、2回接種することで半数が『ロング・コビッド』を回避できるという結果が出ています。子供にも効く可能性はあります。私としては可能な限りワクチンを接種したほうがよいと考えています」
一方で、こうした論文データを見ても迷う家庭も少なくないだろう。上医師はこうした論文データをもとに、各家庭で話し合う必要があると言う。
「そのご家族が何を大事にするのか、どんな生活環境にあるのかなどで、ケースバイケースで判断するしかありません。心臓の合併症を持っているとか基礎疾患がある小児は打ったほうがいいし、周囲に感染者がほとんど出ていない地域に住んでいる子は様子見でもいい。現在の感染状況や症状から考えると高齢者のように一律で接種すべきとは言えず、ワクチンの必要性に差がある。状況を見て冷静に判断すべきです」(上氏)