3月から全国で小児(5~11歳)に対する新型コロナワクチンの接種が始まっている。では、小児へのワクチンの効果はどうなのか。
米疾病予防管理センター(CDC)は3月4日の週報で、全米10州での調査結果を公表したが、オミクロン株優勢期(デルタ株含む)において、5~11歳のワクチン2回接種後14~67日の感染予防効果は46%だったと報告している。インフルエンザワクチンの感染予防効果が50%ほどとされているので同程度以下の効果だ。
小児ワクチンの集団接種の現場に立つ帝京大学大学院公衆衛生学研究科の小児科医・高橋謙造医師はこう語る。
「このデータだけ見ると、子供に怖い思いをさせて2回接種させても、感染してしまう可能性は否定できません。しかし、この調査にはもう一つの重要なデータがあり、入院予防効果は74%あったということです。米国においては医療制度も異なりますので、重症化しないと入院はさせません。つまり、小児接種において感染予防効果は弱いが、重症化予防効果は十分にあるということです」
3月31日に米医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)』に掲載された論文でも重症化予防効果が確認されている。米国23州で実施した調査で、昨年7月17日~今年2月17日に新型コロナに感染した267人を含む5~11歳の約537人を対象に、ワクチンによる入院予防効果を調べたところ、入院予防効果は68%という結果だった。
この研究について、ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也医師は「悩ましい調査結果です」と打ち明ける。
「世界でもっとも権威のある医学誌で信頼できる調査です。一方で、子供で重症化するのは、もともと基礎疾患があるケースなどが多い。そうした子は当然、接種すべきですが、ごく一部の人に感染させないために小児全員が接種すべきかといったら、答えるのが難しい。人種や感染状況が異なる日本での調査結果が出るのはまだ先ですが、CDCの調査のようにワクチンの感染予防効果はそこまで高くはないと思われます。接種したからといって感染しないわけではない」