日本が「バブル経済」を迎えるのは、1985年。その少し前の1982年には、未曽有の好景気を予感させる“文化の隆盛”が見られていた。特に映画界では、洋画も邦画も多くのヒット作が生まれた。
夢や希望にあふれた洋画が日本でヒット
1970年代の洋画は監督が作りたい作品を追求した芸術作品が多かったが、1980年代に入ると、巨費を投じた娯楽作品が作られるようになった。
「その代表が、スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』や、ジョージ・ルーカスが製作総指揮の『インディ・ジョーンズ レイダース 失われたアーク《聖櫃》』です」
とは、映画評論家の渡辺祥子さんだ(「」内、以下同)。
「彼らはディズニー作品の影響を受けた世代。そのせいか、どの作品も、人間らしく、困難を乗り越えた先にハッピーエンドがある印象です」
この時代のアメリカはベトナム戦争の傷が社会に影を落としていた。それゆえに夢や希望がある作品が求められた。さらに当時は、家族で映画を見る習慣が残っており、子供も大人も楽しめる作品が多く作られ、それが日本でもウケたのだ。
加えて海外がまだ“憧れ”だったせいか、非日常的なテーマの作品も話題に。
「この時代は、スターがいた時代でもありました。『インディ・ジョーンズ』でより大物になったハリソン・フォードをはじめ、『愛と青春の旅だち』でトップスターになったリチャード・ギア、『ドリーム・リーグ』でデビューしたケビン・コスナー、香港のアクションスターとして知られ『キャノンボール』にも出演したジャッキー・チェン、『ロッキー』シリーズのシルヴェスター・スタローン……。
当時、『キネマ旬報』や『スクリーン』『ロードショー』などの映画専門誌も複数あり、付録のピンナップやグラビア目当てに購入するファンも多かったんです」