令和2年版(2020年版)警察白書によると、2019年に検挙された殺人事件の「被疑者と被害者の関係」で最も多かったのは「親族」(475件、54.3%)だった。次いで多かったのが「知人・友人」で189件、21.6%。
日本の殺人事件は全体として減少傾向にあるが、その内訳を見てみると半数以上が親族間で発生している。「喧嘩するほど仲が良い」とはよく言ったものだが、それも死語となりつつある時代になっているのかもしれない。
コロナで激変した社会を生き抜くために役立つ「知恵」や「情報」をまとめた書籍『ウィズコロナ時代に後悔しない 暮らしの新常識109』(小学館)では、親族間殺人に関するデータをこう分析している。
日本における殺人事件の発生件数は、諸外国と比較して非常に少なく、治安は非常に良いという評価は揺るがない。しかし、発生した事件の内訳を見ると、近年では親族間の殺人が過半数を超える状態が続いている。
長期間にわたる老老介護に疲れ果ててしまった、将来に絶望したといった理由で殺人に発展するケースや、日常的な肉体的・精神的DVで追い込まれた末の殺人など、親族間殺人の中でも3割以上が配偶者殺人だ。
前述の警察白書によると、2019年に起きた親族間殺人で検挙されたのは、「配偶者」が158件、33.3%で最多だった。「親」131件(27.6%)、「子」107件(22.5%)と続くことから、家庭という“密室”が事件の舞台になっていることがうかがえる。
また、意外なことに男女比はおおよそ半々となっている。長引くコロナ禍は、さらに多くの悲劇を生んでしまう要因になり得る可能性をはらんでいる。ちょっとしたきっかけでいつ自分が被害者に、はたまた加害者になるかわからない時代なのだ。