コロナ禍で世界中の旅客需要が瞬く間に蒸発した。以来2年、航空業界もまた、回復途上にある。そうしたなか、2大エアラインのひとつであるANAホールディングスではこの4月にトップが交代し、芝田浩二社長(64)の新体制が始動―─どのような反転攻勢を見据えているのか。
2021年3月期のANAホールディングスの決算は、コロナ前(2019年3月期)に比べ売上高は約3分の1弱まで縮小し、1650億円あった営業利益は一気に4600億円超の赤字に沈んだ。2022年3月期も、第3四半期に黒字まで漕ぎつけたが、第4四半期はオミクロン株蔓延で再び苦戦、通期での赤字は避けられない。芝田新社長にとってはまず、年間での黒字達成が大きな課題となる。そこで同氏に、難局をいかに打破し、必達目標の黒字化を実現するのか取材した。
──3年目に入ったコロナ禍にロシアのウクライナ侵攻という地政学リスクも加わり、難しい舵取りでの船出となりました。
芝田:社長指名を受けた時、この先も二難、三難という思いでしたが、2月末にウクライナ戦争が起きて八難ぐらいになったような、非常に厳しい環境認識は持っています。ただ、航空業界には様々なリスクが付きもので、古くは中国の天安門事件しかり、その後もアメリカの同時多発テロ、SARS、リーマン・ショック、東日本大震災などの逆境に遭遇しましたが、その都度、我々は自分の足でしっかり立って克服してきた歴史があります。
──黒字化に向けて足元の手応えは。
芝田:国内線に関してはかなり需要が戻りつつあり、このままいけば夏にはコロナ前の需要水準にほぼ戻るのではないかと見ています。国際線も、向こう2年ぐらいかけてコロナ前に戻るのではないか。ただ国際線の需要回復は少し読みづらい。日本の入国緩和政策だけでなく、外国の政策も揃わないと本格的な回復軌道に乗ってこないからです。需要の戻り方も、ビジネスとレジャー、インバウンドとアウトバウンドとがあるなかで、現状では訪日のインバウンド需要の戻りが一番早いという仮説を立てています。
この2年のコロナ禍で学習し、機材手当てを中心に供給調整にグリップを利かせてきました。需要の増減に柔軟に対応すれば、国際線の収益も十分に担保していけるはず。新たな問題はロシアのウクライナ侵攻です。我々もロシアの領空を飛ばない迂回ルートを採っているため、飛行距離が伸び燃料費が高くなります。この状況が続くようであれば、お客様に運賃値上げのご負担をお願いすることになる可能性もある。
目下、我々のビジネスを下支えしているのが貨物事業で、2021年度の第3四半期までの実績で言えば、航空事業全体で貨物が占める割合は51%に達しています。今後の中期的な戦略上も重要なビジネスになる。