先の大統領選で勝利した保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏が気炎を上げるのが、5月9日に任期を終える文在寅・現大統領の逮捕だ。
韓国では政権交代のたびに前大統領が訴追、弾劾、逮捕されており、元検事総長の尹氏も「当然、捜査をする」と現地紙に答えている。
「文氏には2018年の蔚山市長選に不正に介入した疑いがあり、すでに現職市長と政府高官ら15人が公職選挙法違反で在宅起訴されています。また私邸の土地を特別扱いで安く購入した疑惑も浮上している」(在韓ジャーナリスト)
いずれの疑惑も政権交代後に徹底的に追及されると見られていたが、文政権率いる「共に民主党」が最後の悪あがきをみせた。捜査の妨害に繋がる新法案をぶち上げたのだ。
大韓金融新聞東京支局長の金賢氏が語る。
「共に民主党の院内代表・朴洪根議員が4月の国会で検察の捜査権を完全に剥奪する新法案を成立させる意向を明らかにしています。議席の3分の2近くを占める共に民主党がこれを強行した場合、国民の力に対抗手段はない。
そうなれば捜査権は事実上、警察が独占することになる。韓国の警察は政治がらみの事件に対する捜査ノウハウが弱く、新政権による文氏の捜査が難航、あるいは頓挫する可能性も高まります」
文政権期に与党要人に対する捜査を進めた検事たちは、秋美愛氏、朴範界氏の2人の法相が断行した「大虐殺人事」により、軒並み地方に飛ばされた。文氏の逮捕には幾重にも高い壁がある。
「こうした逆風を跳ね返して捜査を進めるには、インパクトのある新事実や証拠の提出が求められます。今後しばらく、水面下で激しい情報戦が繰り広げられることが予想されます」(金氏)
報復の歴史が終わる日は来るのか。
※週刊ポスト2022年4月22日号