ディナーショーでは沙也加さんのことには触れないかもしれない──多くのファンがそう感じていたという。しかし松田聖子(60才)は冒頭から深々と頭を下げた。ファンに感謝の言葉と心配させたことへの謝罪をし、そして娘の思い出を語ると、抑えられない涙がこぼれて……。
「思えば、沙也加は小さい頃から歌を歌うのが大好きでした。おもちゃのマイクを持って私の『Rock’n Rouge』をいつも元気に歌っていました。それが……昨日のことのように思い出されます。私は……沙也加の歌声が大好きでした。いまも彼女の歌声は私の心の中に響いています」
4月9日に都内のホテルで開催されたディナーショーで松田聖子は、声を震わせながら、かみしめるように言葉を紡いだ。愛娘の神田沙也加さん(享年35)が昨年末に急逝し、活動を休止していた聖子にとって、4か月ぶりとなる活動再開の場だ。
昨年12月18日、聖子はこのホテルでディナーショーを開催していた。歌い終わると、ファンからの拍手を浴びた。その日もいつもと変わらない一日が終わるはずだった。終了後、沙也加さんの死をスタッフに知らされた聖子は人目もはばからず号泣し、翌日以降のショーをキャンセル。今回のショーはこのときの振り替え公演として行われたものだった。
会場を訪れた複数のファンが、聖子の“再出発”を広く世間にアピールしたいという思いで、『女性セブン』の取材に答えた。シルバーの華やかなドレスに身を包んだ聖子は、MCで涙ながらに沙也加さんの思い出話を披露したという。
「沙也加さんは聖子さんよりもずっとしっかりしていて、一緒にステージに上がるときは、いつも緊張してしまう聖子さんを沙也加さんが励ましていたそうです。これからも沙也加さんに励ましてもらって、頑張っていかなくちゃと自分自身に言い聞かせるように話していたのが印象的でした」(ディナーショーに参加したファン)
悲しみをこらえながらも必死に言葉を紡ぎだそうとする聖子の気持ちは、ファンにも伝わった。聖子が言葉に詰まり、会場に静寂が訪れた。声を上げてはいけない──わかっていても、気持ちが抑えきれなかったのだろう。あるファンがためらいながらも、マスク越しに「頑張れ!」と口にした。すると、声援をためらっていたファンたちが、我慢しきれず、口々にこう声を上げ始めた。
「無理しなくていいよ!」
「いいよ、言わなくて!」
温かい声援に、聖子の目には涙が浮かんだ。ファンもつられて涙した。会場にはすすり泣く声が響き渡った。
「例年のディナーショーでは、MCの間に『沙也加ちゃんは~?』などと、沙也加さんの近況を問うような質問がファンから入って、それに聖子さんが答えたりしていたんです。でも、今回は明らかに空気が違い、聖子さんを気遣うような声が上がっていました」(前出・ファン)