4月1日から改正育児・介護休業法の段階的な施行がスタートした。企業が社員に育休取得を働きかけることが義務付けられ、10月から父親であっても産休が取れる「産後パパ育休」も始まろうとしている。
厚生労働省のデータでは、2020年度の男性の育休取得率は12.65%だが、育児休業の取得希望がありながら取得できなかった男性社員の割合は29.9%にもなることがわかった。政府は2025年までに育休取得率を30%に上げる目標を掲げている。
男性が家庭で活躍しやすい環境が整いつつあるいま、コロナ禍の自宅勤務も重なって家事に積極的に参加する夫も増えている。
IT会社勤務の野口正志さん(仮名・54才)は、リモートワークの日がほとんどだという。妻の代わりに毎晩、家族の食事を作るようになって2年が経ち、「次はどんな料理にチャレンジしようかと考えるのは楽しい」と笑顔を見せる。
「共働きの妻は自宅作業が難しい職種なので、毎日出社しています。長女は大学受験、息子は高校受験と忙しかったので、比較的余裕がある私が料理をするようになりました。最初は安いからと無駄な食材を買い込んでしまい、料理の手際も悪く、妻とけんかになることもありましたが、いまでは家族が『おいしい』と口をそろえて褒めてくれます」
一方で、リモートワークになっても、家事にまったく関心を示さない夫も珍しくない。夫が家にいる時間が増えたため、妻からは「子供やペットに加えて、夫の世話まで増えた」という不満も聞こえてくる。
『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか』(平凡社新書)などの著書がある家事研究家の佐光紀子さんが言う。
「男性が家事を一切手伝わない家庭では、妻が『どうせあの人はできないから』と諦めてしまっていることが多い。その大半が60代以上です。もし妻に万一のことがあったらどうなるでしょうか。家事ができない夫は子供の重荷になるだけです」
現代社会では、多くの女性は仕事をして家計を支えながら、家事や育児をこなしている。2015年の国勢調査によると、64.6%が共働き世帯であり、「共働き等世帯数の推移」を示したグラフでも、1980年から2020年の40年間で、共働き世帯は約2倍に増えている。
妻がいくら家庭をよいものにしたいと思っても、ひとりでできる労働には限界がある。
外で働き、稼いでくるだけで「いい夫」とされた時代とは違い、「家庭で働く」こともいい夫の条件となるのだ。
全日本ズボラ主婦連盟代表理事を務める料理研究家の浅倉ユキさんは、妻と夫で役割分担する時代ではないと指摘する。
「いまや、仕事をする女性も、稼げる女性も当たり前になってきました。『男性は仕事、女性は家事』とフィールドを分けるのではなく、お互いがマルチに活躍する時代です。家族の幸せや日常生活の充実度を高めるには、夫の家庭での活躍こそがカギを握っていると言っても過言ではありません」