スポーツ

佐々木朗希 高校最後の夏に投げさせなかった、大船渡高校監督「英断」の真実

佐々木朗希の高校時代を振り返る(時事通信フォト)

佐々木朗希の高校時代を振り返る(時事通信フォト)

 ロッテ3年目の佐々木朗希(20)の衝撃の快投が、絶賛の嵐となっている。メディアは大船渡高校時代、甲子園行きが懸かった試合で連投回避のため佐々木を登板させなかった指導者も称賛する。だが、当時の判断は、決して単純な“美談”として片づけられるほど、生やさしいものではなかった──。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。【文中敬称略。前後編の前編】

 * * *
 千葉ロッテの佐々木朗希が20歳という史上最年少で完全試合を達成した翌日、私は「令和の怪物」が東日本大震災以降に過ごした岩手県の大船渡市に向かった。

 3月に起きた地震の影響により福島・仙台間の新幹線が不通となり、沿岸部に位置する大船渡は陸の孤島になっていた。それでも私を駆り立てたのは大船渡高校監督・國保陽平の存在だ。

 教え子が完全試合に加え13者連続三振という新記録を打ち立てたというのに、國保の談話は一切聞こえてこなかった。私が学校側に問い合わせても、応対した教頭はつれなくこう答えるのみ。

「もううちの生徒ではありませんから、すべてのメディアに対しコメントは出しません。國保とも電話をおつなぎすることはできません」

 ただ、拒まれるほど私の足は國保に向く。2年半前もそうだった。これまでの取材のやり取りからして、私には口を開くのではとの期待もあった。

 しかし、大船渡に到着し、現在も同校で外部コーチを務めている新沼丞(60)を訪ねると、衝撃の事実を知らされた。

「あの騒動後、多くのクレームが学校に寄せられ、OB会からも監督の交代を求める動きがあった。それが関係しているかわかりませんが、昨年の夏をもって、國保さんは監督を辞めています。練習にも顔を出してこなかった。野球部に居づらかったのかもしれません」

 私は言葉を失った。高校卒業からわずか2年あまりで達成した佐々木の完全試合は、国民的論争となった國保のあの日の決断が正しかったことを証明したとも言える。

 それなのに当事者は既に監督を退いていた。

 2019年の夏、佐々木を擁した大船渡は35年ぶりの甲子園を懸けて岩手大会決勝に臨んだ。ところが、花巻東との試合で國保は佐々木をマウンドに送らなかった。2対12と大敗したあと、二重三重の報道陣に囲まれた指揮官は、顔を紅潮させながら理由を明かした。

「故障を防ぐためです。ここまでの球数、登板間隔、気温……投げられる状態にあったかもしれませんが、私が判断し、投げさせませんでした。もちろん、私が『投げなさい』と言えば、本人は投げたと思うんですけど、私にはその判断ができませんでした」

関連記事

トピックス

9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
オンラインカジノを利用していたことが判明した山本賢太アナウンサー(ホームページより)
フジテレビ・山本賢太アナのオンラインカジノ問題で懸念される“局内汚染”「中居氏の問題もあるなかで弱り目に祟り目のダメージになる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン