安倍晋三・元首相と朝日新聞の長きにわたる闘争に決着がついたのか。朝日はついに安倍氏の軍門に下ったのか。
新聞・メディア業界にそんな衝撃を与えたのが朝日新聞の峯村健司・編集委員(外交、米国・中国担当)による、『週刊ダイヤモンド』の安倍氏インタビュー記事への介入問題だ。
朝日のOB記者たちはショックを隠せない様子だ。元朝日編集委員の落合博実氏が語る。
「恥ずかしい話です。彼は妙な言い訳をしているようですけれど、頼まれて動いたという基本的な事実関係を認めているわけですから説得力がありません。朝日OBとして読者のみなさんには申し訳ないやら、いろんな感情がこみ上げてきました」
テレビ番組での発言を巡って安倍氏サイドと訴訟になった経験を持つ元編集委員の山田厚史氏もこう言う。
「驚きました。安倍晋三は執拗に朝日の記者を敵視してきたのに、まさか安倍のパシリを買って出る記者が同じ朝日新聞の編集委員にいたとは。彼は取材熱心で意欲的な記者だっただけに、ショックでした。記者は手腕(能力)があっても姿勢(良心)が伴わないと暴走します。残念です」
コトの経緯はこうだ。峯村氏は中国の安全保障政策に関する報道で「ボーン・上田記念国際記者賞」、昨年は無料通信アプリLINEが日本の利用者の個人情報に中国人技術者がアクセスできる状態にしていたことをスクープして新聞協会賞を受賞した朝日のエース記者。その峯村氏が今年3月、『週刊ダイヤモンド』が行なった安倍氏へのインタビューについて同誌の副編集長に電話を入れ、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」と発言し、「とりあえず、ゲラ(*校正用の記事の試し刷り)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと要求した。
週刊ダイヤモンド編集部は要求を拒否し、朝日新聞に対して「編集権の侵害」と抗議。朝日は調査を経て、「政治家と一体化して他メディアの編集活動に介入したと受け取られ、記者の独立性や中立性に疑問を持たれる行動だった」とダイヤモンド側に謝罪。4月7日付朝刊社会面で峯村記者の行為は「報道倫理に反する」と編集委員を解任し、停職1か月の処分を下したことを大きく記事化した。
この問題について安倍事務所は、「朝日新聞社と峯村氏との間のことであり、事務所としてコメントは差し控えさせていただく」と“我関せず”の構えだ。