当初、東部は4月1日、西部は4月5日を持ってロックダウンは解除される予定であったが、約2週間以上たった現在でも大半の地域はロックダウンされ続けており、住民たちは物心両面で苦労を強いられている。上海・西浦地区に住む男性駐在員A氏が語る。
「ロックダウンが始まって以降、連日続くPCR検査にほとほと疲れています。時には前日の夜12時ごろに検査の通知があって翌朝6時半に検査させられることもあります。そうした徹底的な検査を行なっても、暮らしている居住区の中で一人でも陽性者が出るとまた7日間は部屋のドアから一歩も外に出られない状態が続くので終わりが見えません。
感染拡大以前から上海は厳戒態勢で、ショッピングモールなどに入場する際には入り口で、感染発生地域に居住していないことを証明する『健康コード』と呼ばれる電子マネー決済アプリと連動した安全担保証を提示させられることがありました。ですが、感染が増加し始めた3月中旬以降からは健康コードに併せ、過去2週間の行動履歴が追跡できる行動証明証、さらには48時間以内の陰性証明証の提示を求められるようになりました」
ロックダウン前夜への不穏な空気を感じ取ったA氏が外資系スーパーでブロック肉や野菜、飲料水などを徐々に買い込むようになった時期と前後して、上海では感染爆発の“火種”とも言えるある事件が起きたという。現地記者が解説する。
「上海では旧正月と前後して、先に感染が拡大していた香港からの旅客数が増加。そうした旅客者らは到着後のPCR検査後、原則3週間は市が指定する施設での隔離が求められていますが、旅客数が増えるにつれ隔離施設数も限界となり、5つ星クラスのホテルまでも隔離施設として使用されることになった。そうした隔離施設の一つとなった市西部にあるホテル『華亭賓館』でクラスターが起きてしまったんです」
1986年に建設された華亭賓館はブランド店が立ち並ぶ高級エリアに位置し、近辺には日本のアイドルグループ『嵐』や『X JAPAN』がコンサートを行なった上海体育館が隣接している。通常なら隔離施設に使用されるようなホテルではないが、隔離者の増加と改装工事のために同ホテルが一時休業していたため、急遽、隔離施設として使用されることになった。