女性管理職割合は「24.3%」
加えて、吉野家にはもう一つ“即解任”を決断する要因があった。同社の事情に詳しい経営アナリストが語る。
「吉野家は、社員の“女性活躍推進”を掲げていました。その看板だけ聞くと、どこの会社もやっている当たり前のことだと思うかもしれませんが、吉野家にとって女性社員は戦略上どんどん重要になっているのです。
外食産業はどこも人手不足の状況で、女性などの働き手の採用を強化しています。しかも会社として女性客を増やしていきたいという段階にあり、それには女性社員ならではの視点や発想が必要だった。そうした中で、女性社員のモチベーションや愛社精神を著しく傷つけるような発言は看過できません。“降格”や“減給○か月”といった甘い判断では、社内に説明ができない状況でした」
吉野家の採用サイトでは、「女性社員の割合30%!」「女性管理職の割合30%!」への取り組みとして、「女性採用担当者を配属」「キャリアへの意識改革」「男性社員への理念浸透活動」などに注力していることを説明。さらに、女性社員ならではの相談や悩みを共有できるネットワークとして「吉野家女子会」を発足させている。
同社の経営戦略を説明するサイトでは、「グループ女性管理職比率24.3%」という数字が示されている。
「目標とする30%には届いていませんが、帝国データバンクの2021年の調査によると、女性管理職の平均割合は8.9%。過去最高の数字ではあるものの、まだ10%にも達していない。政府も女性管理職割合を30%に引き上げる方針を示しているが、日本企業では遅々として女性の登用は進んでいません。
その中で吉野家の24.3%はとても高いと言えます。何をもって“管理職”とするかの定義の問題はありますが、少なくともそうした社内の女性幹部たちから今回の発言に対して強い批判が起きたことは間違いありません」(同前)
吉野家では、女性店長を増やすことや復職支援、育児支援にも力を入れている。そうした中で、「生娘をシャブ漬け」発言に対し曖昧な形で決着させるという“日本的”な処分は許されなかったのだ。
女性の消費者、そして女性社員たちから、組織としての信頼を取り戻せるか。正念場だ。