安倍氏は国会で朝日批判をしばしば繰り出す。
「聞いた話だが、朝日新聞の幹部が『安倍政権打倒は朝日の社是である』と。社是であるのは全く結構だが、それはそういう新聞なんだと思って私も読む」(2014年2月5日の参院予算委員会)
決定的な転機となったのは、朝日の2つの誤報問題だった。ひとつは福島第一原発事故で陣頭指揮にあたった東京電力の吉田昌郎・所長の「吉田調書」をもとにした、「所員の9割に当たる約650人が吉田昌郎所長の待機命令に違反し、第2原発へ撤退した」(2014年5月)との報道。本誌・週刊ポストがこれを「誤報」と報じたのをきっかけに批判が高まり、朝日は検証の結果、記事を取り消して記者6人を処分した。
もうひとつは、同年8月、朝日は「慰安婦問題を考える」と題した検証記事で日本軍の命令で強制連行したという話が証言者の創作であったと誤報を認め、過去の慰安婦強制連行報道を遡って削除。同年9月には、当時の木村伊量・社長らが2つの誤報について謝罪会見を行なって辞任を表明した。
国会では自民党が朝日の誤報を追及。安倍氏も、
「慰安婦問題の誤報で多くの人が傷つき、悲しみ、苦しみ、怒りを覚えた」
「かつてNHKへ圧力をかけたという捏造報道をされたことがある。彼ら(朝日)が間違っていたと一度も書かない。私に一度も謝らない」
と朝日批判のトーンを一段と高めていく。
大統領就任が決まったトランプ氏と初会談(2016年)した時、安倍氏はこう朝日に勝利宣言してみせたことがある。
「あなたはニューヨークタイムズに徹底的に叩かれた。私もニューヨークタイムズと提携している朝日新聞に叩かれた。だが、私は勝った」
その後、「モリ・カケ・サクラ」と呼ばれる3つの疑惑が噴き出して朝日の反撃に遭うが、あの時の勝利宣言が今や現実のものになっている。