かつての蜜月関係を払拭するかのように、安倍晋三・元首相がロシアのプーチン大統領を批判している。4月17日、福島県郡山市での講演では、プーチン氏について「ウクライナの祖国を守るという決意の強さを見誤った。そして自分の力を過信した結果、こういうことになっている」と述べた。
それに先立ち3月24日には、安倍派の会合冒頭でウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン国会演説について「改めて私たち日本はウクライナ国民とともにある。武力による侵略、武力による一方的な現状変更の試みは断固として許さないという決意をするとともに表明したい」と、ウクライナ支持を表明した。
この変わり身の早さに、永田町の視線は冷ややかだ。ベテラン政治ジャーナリストは言う。
「27回という会談の数字が物語っているとおり、安倍氏が北方領土交渉のためにプーチン氏に接近し、蜜月関係を築いたのは明らかです。その外交交渉に関する自己検証をしないままプーチン氏を批判しても、『いまさら言っても』という印象は拭えません。
そのうえ、安倍さんはこのウクライナ戦争を機に、『核共有論』に始まり、『敵基地攻撃能力は基地に限定せず相手の中枢にも』『防衛費をNATO並みに』など、防衛力強化についての持論を次々展開しています。それ自体は今後議論していくべきものと思いますが、なぜ安倍政権の時代に議論できなかったのか。これに関しても自己検証がなされた様子はありません」
自民党内からは、最近の安倍氏の“言いたい放題”の様子を、「先達」と重ね合わせる声も出てきている。非主流派の自民党関係者は言う。