女子プロゴルフツアー「KKTバンテリン・レディス」(4月17日最終日)で、史上最長となる2時間のプレーオフを制したのはプロ6年目の植竹希望(23)。植竹は「黄金世代」での10人目の優勝者となったが、早くから華々しく活躍した同年代の選手たちのキャリアと比べると、下部ツアーでチャンスを窺う時期のあった“苦労人”である。
女子ゴルフの「黄金世代」とは、宮里藍や横峯さくらの活躍に憧れてゴルフを始めた1998年度生まれの選手たちを指す。勝みなみ、畑岡奈紗、渋野日向子、原英莉花、小祝さくら、新垣比菜、河本結など、次々と新しい優勝者が誕生してきたが、ツアー優勝はもちろんのこと、そもそもレギュラーツアーに出場するのも簡単なことではない。同世代が次々と優勝することは奇跡に近いとさえ言えるだろう。
今回、初優勝を果たした植竹は高校卒業後、2017年7月のプロテストに一発合格。下部ツアーである「ステップ・アップ・ツアー」を主戦場としていたが、2018年は賞金ランク114位、2019年は43位と伸び悩んだ。推薦やマンデートーナメント(出場権を持たない選手のための事前選考)からレギュラーツアーにも出場したが、すべて予選落ち。2019年までレギュラーツアーでの獲得賞金はゼロだった。
初めて植竹がレギュラーツアーにフル参戦できたのは、プロ4年目となる2020~21年のシーズンだった。QTランキング48位での出場だったが、このチャンスにトップ10入り7回と健闘。最終的に賞金ランキング33位で初シードを手にした。そしてプロ6年目となる2022年シーズンの7戦目にして、黄金世代10人目の優勝者となったのだ。
その植竹が初優勝したのと同じ週の前半、大分県ではステップ・アップ・ツアー「フンドーキンレディス」(4月14日最終日)が開催されていた。初日から首位を守り、2位に6打差をつけて完全優勝したのは、昨年11月にプロテストに合格した大林奈央(22)だった。
大林は2017年のIMGアカデミー世界ジュニア選手権(15~18歳女子の部)のチャンピオン。この大会はジュニアの世界一決定戦で、過去にはタイガー・ウッズ、アーニー・エルス、フィル・ミケルソン、ロレーナ・オチョアなどが優勝し、世界のトッププロへの登竜門とされる。同年の大会で大林は、フィリピン代表として出場していた笹生優花との3打差を最終日に逆転して優勝。その勝負強さで注目されていた選手だが、今回、ステップ・アップ・ツアーに優勝してもレギュラーツアーへの出場権はない。
「2016年まではステップ・アップ・ツアー優勝者には翌々週のレギュラーツアーから4試合の出場権が与えられていたが、2017年に撤廃。賞金ランキング制となり、年間1位と2位には翌年のレギュラーツアー前半戦の出場権が与えられるといった制度に変わった」(ゴルフ担当記者)