臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、繰り返されるミサイルの発射や高級住宅街の建設など、話題に事欠かない北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記の印象操作について。
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そのニュースを見て、なんとも奇妙な感じがした。画面に映っていたのは、朝鮮中央テレビの看板アナウンサー、李春姫(リ・チュニ)さんと手をつなぎ、豪華な部屋の中を歩く北朝鮮の最高指導者・金正恩総書記の姿だ。
金総書記は国内外からの注目を集めるため、印象操作に力を入れ始めたのだろうか。そう思ったのは、3月25日に朝鮮中央テレビが公開した新型のICBM、大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射映像を見たからだ。これが今までみたいな記録映像とは違い、人々が思わず目を止めて見てしまうようなアピール性の高い、映画のような作りだったのだ。
ミサイル格納庫の扉が開くと、そこから出てきたのは、黒い革ジャンに黒いサングラス姿の金総書記。イメージはハードボイルドで、歩き出しのスローモーションが効果的だ。両脇に並ぶのは金総書記よりやや背が低く見える軍人2人。ミサイル発射の成功を、金総書記の功績として大々的にアピールする目的ならば、並んで歩く者が金総書記より背が高いことはあり得ない。北朝鮮の映像だ。そこには何らかの意図が含まれているような気がする。
移動式発射台に搭載された弾道ミサイルの前を歩く金総書記は、自らがミサイルを誘導し、従えているようにも見える。その偉大さはミサイルの大きさに比例し、成功は金総書記の導きによるとでも暗に印象付けたいかのよう。ミサイル発射の瞬間、建物の窓からミサイルを見上げ、手をたたいて満面の笑みを見せた。そして映像は、滑走路のような場所を歩くシーンで終わる。“北朝鮮はこれからも金総書記とともに大きく前進していく”というメッセージだろうか。