胃液が食道に逆流して、炎症を引き起こす「逆流性食道炎」。統計によって割合はまちまちだが、「日本人の5人に1人は罹患と推定」「3人に1人は悩んでいる」などと言われている。一方、それとよく似た症状を引き起こす別の病気が「非びらん性胃食道逆流症」だ。胸やけ、胃もたれなど逆流性食道炎と同じ症状があるのに、内視鏡検査をしても食道には炎症が見られない。胃酸が原因でないため、胃酸を抑える薬を飲んでも症状は改善しない。自律神経が大きく関与しているものと見られている。
「非びらん性胃食道逆流症」は炎症がないので食道「炎」とは呼べず、この名称になった。諸症状が起きる理由は、緊張、疲労、加齢、天候の移り変わりなど。様々な変化を体が許容できず、ストレスとなって自律神経の働きに異常を引き起こす。
10代の思春期または更年期以降と、心が揺れ動く年代に多く見られるのが特徴的。診断が難しいため、問診で逆流性食道炎や神経性胃炎、自律神経失調症と診断されたままの人、内視鏡検査を受けても炎症がないため何の病名も付けられないままの人が実際には大勢いると推測される。
炎症を抑える薬では治らないものの、自律神経のコントロールさえできれば解決可能。ある意味、逆流性食道炎よりも完治の希望が持てる病気だ。
自律神経に「触れて揉む」マッサージ “お腹の自律神経を探り、自分のストレスを知ろう”
外部環境の変化に応じて指令を出す自律神経。しかし、受け止めきれないほど外部からの刺激にさらされると、交感神経と副交感神経のどちらかが過剰に働き、胃食道逆流症をはじめとする不調のサインが現われる。心理的なストレスも、この「外部からの刺激」に含まれる。
「『自律神経って本当に存在しているんですか?』とよく尋ねられます」
こう笑うのは、新板橋クリニック院長の清水公一氏。自律神経は精神的なものとのイメージが強く、つい架空の神経だと思われるようだ。消化器外科医師として内臓を直接観察する経験も多い清水院長は、以前から外科医同士で「触診したとき時々硬さを感じる。あれは何だ?」と疑問をぶつけあっていた。そのうち、それこそが硬くなった自律神経であると気づき、皮膚の上から自律神経を揉みほぐす方法にたどり着いたのだ。
非びらん性胃食道逆流症の改善は、自律神経に触れ自分のストレス度合いを把握することから。写真を参考に、自分で心と体をほぐしていきたい。