中国の上海市や深セン市、武漢市などの大都市で新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府による都市封鎖(ロックダウン)が実施されるなか、湖南省では警察が地元住民に対して、パスポートを引き渡すよう命じ、拒否すれば「捜査の対象になると思った方がよい」と警告していることが明らかになった。警察は「この措置は今後、全国的に展開される。感染が収まった時点で、パスポートは返却する」と約束しているという。
中国では都市部の富裕層の間で、上海などのロックダウンによって住民の食料不足などが深刻化し、医療危機も発生していることから、海外移住の希望が急増している。湖南省の警察のパスポート引き渡し命令も、住民の国外脱出阻止を狙ったものとみられる。湖南省の地元メディアが報じた。
湖南省の省都・長沙市では3月末、地元警察がホームページを通じて、企業などの雇用主に対して、すべての従業員と家族のパスポートを警察に引き渡すよう指示する通達を掲載した。
ある市民が電話で、警察に問い合わせたところ、「市政府の公式の通達であり、今後は中国全土で実施される。働いている人だけでなく、パスポートを持っている人は誰でも渡さなければならない。もし、渡さないのなら捜査されると思ったほうがいい」との返事が返ってきたという。
しかし、実際には、湖南省以外でパスポートの引き渡しを求めている地方政府の例は報じられていない。
中国の検索エンジンなどでは、「カナダ移住の資格」といったキーワード検索数が、この1か月前の30倍にも増加。問い合わせの多くは北京市や上海市、江蘇省、広東省など新型コロナウイルス感染防止のために厳しい規制を敷いている都市や省に集中している。
このため、中国政府が今後、中国の都市部の住民のパスポートを提出するよう求める通達を出すとのうわさが広まっているようだ。