世の中、誰かを罵倒したい人であふれている。社会的に非難されるようなことが起きたとき、その事象を起こした当事者へ過剰に責任を負わせようとしたり、責任をとりようがない立場の関係者を罵ったりする人が少なくない。吉野家の元役員による不適切発言が公になって以来、なぜかアルバイト店員まで怒声を浴びせられる理不尽なことが起きている。俳人で著作家の日野百草氏が、店員へのハラスメントが繰り返されている吉野家アルバイト学生に、胸のうちをきいた。
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「吉野家の牛丼そのものに問題はありません。バイトが偉そうに、と思われるかもしれませんが、自信をもって美味しいと言える商品です」
日本を代表する国民食であり、ひとつの文化として愛されてきた牛丼チェーン「吉野家」、筆者の知人にもかつて働いていた人、いまも働く人がいる。みなさんの周辺にもいることだろう。なにしろアルバイトも含め約2万人を超える人が吉野家で働いている。その大半はアルバイト(パート従業員)だが、待遇も含めて評判のいいバイト先でもあり、いまもそうだろう。それに牛丼、とにかく美味しい。
「それなのにひとりの(元)役員のために大変なことになりました。私たちはなにも悪くないのに」
お客様から直接言われるのは私たち
20代の学生アルバイトである彼はコロナ禍も吉野家で働いてきた。彼のことは中学時代から知るが、顔つきといい話し方といい、学生アルバイトとはいえ社会で働くということはこんなに人を成長させるのか。これも吉野家の歴史ある従業員教育の賜物だろうが、そんな吉野家が彼の言う通り、たったひとりの役員(当時。以下、元役員とする)のために大変なことになってしまった。
「お客様から直接言われるのは私たちです。SNSでも日本中の吉野家の店員が悲鳴を上げています」
本稿、アルバイトとはいえ従業員である。業務上の差し障りある内容はすべて書かない約束をしているし、そもそも本旨ではない。ただ伝えたいことは、ただひとりの元役員が不適切な発言をしただけで、従業員はもちろん吉野家の味とも関係がないということ。彼もただそれだけを伝えたい一心であり、筆者もそうである。