3月16日午後11時36分。東日本を強い地震が襲い、福島県と宮城県で最大震度6強を記録した。さらに、4月11日には政府の地震調査委員会が「3月には日本や周辺域でマグニチュード(M)4以上の地震が195回発生した」と発表するなど、列島各地で地震が相次いでいる。
現在、日本で最も危険視されているのが南海トラフ巨大地震だ。政府は東日本大震災と同じM(マグニチュード)9クラスと予測し、30年以内に70〜80%の確立で起きるとしている。
それどころか、南海トラフ巨大地震の発生時、相模トラフという別の震源域と連動して、「スーパー南海地震」と呼ばれる超巨大地震に発展する可能性まで指摘されている。その被害は茨城県沖から東海、近畿、沖縄や台湾にまで至るという。スーパー南海地震が発生したら、どんな状況になるのか? 以下はそのシミュレーションだ。
〈203X年12月X日朝。東京近郊、通勤電車を待つ駅の高架ホーム。快速電車がすべり込んできたそのとき、通勤客のスマホからアラーム音が次々に鳴り出す。緊急地震速報だ。次の瞬間、ホームが激しく揺れた。立っていられなくなり、悲鳴が飛び交う。ホームの柱につかまったり、這いつくばるほかない。長い。かなりの間、揺れが続いた。
必死にスマホの画面を見ると、「静岡県沖の南海トラフを震源とするM9.1の地震が発生」との情報。倒れた電柱や自販機を避けながら必死に家路を急ぐが、エレベーターが動かず、20階の自宅までは階段を上るしかない。
家の中はほとんどの家具が転倒。テレビはつかず、ラジオのスイッチを入れる。アナウンサーによれば震源に近い静岡県では地震のわずか4分後、東日本大震災の最大津波16.7mを超える34mもの高さの大津波が押し寄せ、静岡市や浜松市、焼津市など沿岸都市はほぼ全域が水没したという。
東京は無事でよかった──そう思った瞬間、首都圏に突き上げるような揺れがふたたび襲った。南海トラフ巨大地震と連動し、相模湾を震源とする相模トラフ地震が起きた。津波が東京湾に流れ込み、横浜や川崎、千葉の沿岸にある工業地帯はあっという間に津波にのまれた。石油備蓄施設が炎上、その火をまとった津波が沿岸の街を襲い、建物や駐車中の車両のガソリンに引火。爆発音を伴いながら街を焼き尽くす。火災は内陸の方へと延焼し続けた。
津波はついに隅田川へと到達。見上げるような大津波が川をさかのぼり、東京の下町エリアをのみ込んだ。そればかりか、遠く埼玉の春日部、群馬の館林まで水びたしになる。都心の地下鉄はもちろん水の底、感電死した乗客もいたとラジオが伝えた。