国内

深谷隆司氏から岸田首相へ「ウクライナの惨状は『明日は我が身』、核共有の議論を」

深谷隆司・元郵政相(右)が岸田首相に喝(時事通信フォト)

深谷隆司・元郵政相(右)が岸田首相に喝(時事通信フォト)

 ロシアによるウクライナ侵攻をめぐっても岸田政権の足取りは鈍く、課題は山積している。政界の先達である深谷隆司・元郵政相が喝を入れる。

 * * *
 岸田総理は私も良く知っている穏やかな紳士だ。支持率も悪くない。しかし、隣国のロシア、中国、北朝鮮の動きを見ると、穏やかさやきれいごとでは済まない状況にある。

 ウクライナの惨状を見て、「明日は我が身」という自覚こそ、今、岸田総理に求められることだと私は強く思っている。

 安倍晋三・元総理が国内で米国の核を共有する「核シェア」を議論する時期に来ていると問題提起したが、それに対して岸田総理はあっさりと、「非核3原則があるから議論も考えていない」と国会で答弁した。「作らず・持たず・持ち込ませず」だけでなく、「議論せず」「考えず」なら“非核5原則“になってしまう。そんな姿勢でいいのだろうか。

 そんな岸田総理と私には不思議な縁がある。

 私の父は若い頃、青雲の志から満州に渡り、そこで幾久屋百貨店に主任として勤めた。だから私の姉の名前は幾久子という。この幾久屋百貨店の創業者が総理の祖父の岸田正記さんだったのだ。当時のことは父からよく聞かされ、また私が国会議員になってから、同僚議員だった総理の父の岸田文武さんにそんなお話をしたことがある。

 そういう縁もあって、私が引退後、公募で選ばれた後継候補の辻清人君が当選し、どの派閥に入るかを決める時、岸田さんの宏池会を考えた。岸田さんなら誠実な人で、いずれ天下を取ると思っていたから、辻君を育ててくれるだろうと。その話がどこからか耳に入り、2016年11月9日に当時外務大臣だった岸田さんが私のところを訪ねてくることになった。

 ところがその日は、ちょうどトランプが大統領に当選した日だった。外務大臣として忙しくしているのを見て、「これではスケジュール変更だな」と思ったが、岸田さんは予定通りの時間に訪ねてきてくれた。それを見て「とても律儀な人だ」と思った。

 律儀で誠実なところは評価すべきだが、今回の核共有について議論もしないという部分はいただけない。

 もちろん、岸田総理は核共有について全く考えていないわけはないでしょう。自分の意見を持っていると思う。だが、国民からはそう見えない。それでは示しがつかなくなる。難しい問題であっても、政治家なんだから、ましてや総理大臣なのだから思考停止ではいけない。岸田総理自身が率先して、何事も議論を尽くす姿勢を示すことを期待する。

【プロフィール】
深谷隆司(ふかや・たかし)/1935年生まれ。郵政大臣、自治大臣、国家公安委員長、通商産業大臣、自民党総務会長などを歴任。自民党東京都連最高顧問。

※週刊ポスト2022年5月6・13日号

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン