日本人の死因第1位である「がん」。生涯で2人に1人は罹患すると言われる「国民病」だが、医学の進歩によって老親が生きているうちに子供ががんになるケースも珍しくなくなった。親より先にがんになったという著名人に話を聞くと──。
「『残念ながら、がんです』と医師に告げられた時、故郷の介護施設にいる95歳のおふくろに『心配をかけてしまうな』と申し訳ない気持ちになりました。不安にさせるだけなので伝えたくはなかったのですが、私の仕事柄、テレビのニュースやなんかで報じられて知られるのも嫌だったので……」
そう語るのは、歌手の山本譲二(72)。3年前に発症した腸閉塞がきっかけで緊急入院し、検査の結果、大腸がんのステージ2と診断された。
手術で約7cmのがんを含む大腸約20cmを摘出。術後の検査でも転移は見つからず、その後も再発することなく暮らしているが、がんと分かった時は、家族や事務所スタッフの生活を心配するとともに、当時95歳だった母親が気がかりだったという。
「若い時から心配ばかりかけた母に、この歳になって『がんです』と伝えるのがとにかく嫌で。家族や事務所関係者、40年来の付き合いの吉幾三だけに知らせて、極秘に手術を受けました。
その年の7月、45周年のディナーショーでファンの皆さんに病気のことを打ち明ける前に母に会いに行き、『俺、がんになった』と伝えたら、おふくろは『何かご飯を食べた?』って……。認知症がかなり進行していてそういうことも分からなくなったのかと切なかったですが、ちゃんと病気を克服してから言えたのはよかったと思っています」(山本)
医療の進歩により、もともと長寿社会の日本は近い将来、「人生120年時代」が訪れるとされる。
そうなると、国民の2人に1人が罹患すると言われるがんの患者数も増加していくだろう。最近はコロナ禍の「検診離れ」などによってがんが進行した状態で見つかるケースも多い。
がんが見つかった時、山本氏のように高齢の親が健在というケースも珍しくないはずだ。