日本人の死因第1位である「がん」。生涯で2人に1人は罹患すると言われる「国民病」だが、医学の進歩により、親が生きているうちに子供ががんになるケースも珍しくなくなった。親の介護と子育てをしながらがんと闘う辛さは想像を絶するが、4度のがんに悩まされた女優の仁科亜季子(69)はどう乗り越えたのだろうか──。
医師の澤野豊明氏(ときわ会常磐病院外科)は「親のことで不安を漏らすのは、女性のがん患者が多い」と言う。
「女性の乳がんなどは、まさに介護や子育ての状況により治療の選択を悩むケースが少なくありません。やはり現実としては、介護などで親に関わるのは今も女性なのだと感じます」
老親に心配をかけまいと思いつつも、自分が子育てを担う母であるがゆえに、老親に頼らざるを得ないケースもある。4度のがんに悩まされた女優の仁科亜季子が振り返る。
「最初の子宮頸がんが見つかった当時、子育てに忙しく、子供や夫(故・松方弘樹氏)のことを優先していた38歳の時です。子供2人は小学校低学年と小さく、松方さんは家のことは私に任せっきりだったので、留守番をお願いする方に事細かにノートに書き置きをしてから入院と手術に向かいました。その間に子供たちの夏休みがあったので、苗場のサマースクールに預け、東京の両親には参観日に行ってもらうなど要所要所で助けてもらいました」
抗がん剤、手術、放射線と治療が続き、入院期間は4か月に及んだが、「子供たちのところに戻りたい」との一心で乗り越えたという。しかし、再び病魔が迫った。
「1988年に松方さんと離婚して2人の子供を引き取り、20年ぶりに女優に復帰しようとした矢先、46歳で胃がんが見つかりました。最初のがんの時より歳をとった両親には心配をかけたくなくて、高校生になった長男に最初に伝えました。
病院が近かったので母はちょくちょく来てくれましたが、父は娘が弱っている姿を見たくなさそうで……。娘のがんを知りシュンと小さくなった父の姿を見た時は『病気になってごめんなさい』と思っていました」(仁科)