問題山積の日本の政界。しかし現役政治家たちの足取りは重い。政界の先達として亀井静香氏(85)が、国民民主党の玉木雄一郎代表に向け提言する。
* * *
国民民主党代表の玉木雄一郎は若手の国会議員の中で、将来の日本を背負っていける数少ない人材だと思っている。そんな人材はなかなか見当たらない。あとは武田良太や城内実ぐらいだな。
今度の参院選で自民党はまあまあ勝つだろうが、新型コロナの問題もあり大勝ちはできないだろう。勢力が減れば、与党の国会運営にも影響を及ぼす。そこで国民民主党に出番が来る。私自身も経験があるが、連立与党の運営は2党よりも3党のほうが安定する。自公に国民民主が加わるのだ。
その国民民主は、既に野党からテイクオフしている。与党の予算案に賛成したのだから、もう野党には戻れない。テイクオフして、これからどこまで飛んでいくのか、それが玉木の試金石となる。
率直に言えば、自民党を飛び越え、自民党の右側から保守勢力を飲み込めばいい。具体的には、靖国参拝するなど右派の姿勢を明確に示す。そうして自民党の保守勢力を飲み込む立場となり、連立の一員になる。
連立の場合、少数のほうがシャッポ(かしら)になりやすい。多数がシャッポになると少数政党は協力しない。少数政党の首相を多数政党が支えるような姿勢を取らないと、連立が成り立たないからだ。私がつくった村山連立政権もそうだった。
そのセオリーで考えれば、国民民主が連立与党に入り、玉木が総理になる可能性が見えてくる。
ただし、一気に玉木政権ができるわけではない。参院選後、すぐに総理が交代するわけではなく、岸田政権は続くでしょう。岸田総理はよくやっていると思います。支持率も良い。しかし、自民党を掌握、支配できていないことは明らかだ。だからこそ、岸田総理は玉木を取り入れることで、党内の反発勢力を牽制することができる。
そういう状況をつくるには、玉木はもっと尖ったほうがいい。外交でいえば、今の国際情勢は大きく見ると米国のバイデンと中国の習近平が闘っている状態。そこにロシアのウクライナ侵攻があり、北朝鮮がミサイル攻撃能力を高めている。さてその中で日本はどうするのか。アメリカのポチを続けていくのか。日米安保も従来通りでいいのか。それについて玉木が、それこそ日米安保の解消、日本の自主防衛能力の強化などを唱えればいい。尖っているだろう。
もちろん、相当の覚悟がいる。でも今の玉木は、柔い顔で優しそうなことばかり言っておる。もっとドスのきいた顔で、尖ったことを言うようにならんといかん。それができなければ、織田信長のように小さな存在で大きく伸びることはできん。
それとかつての民主党の片一方、立憲民主党は泉健太というのが代表になったが、何をやっとるのか全く分からん。青空対話集会とかいうのを開いて国民の意見を聞くとか、政策公募なんかやっとるけど、政治家が国民に「何したらいいでしょうか」というのは本末転倒でしょう。国民に飯を食わせるために、俺はこうやるというのが政治家だ。玉木は、泉健太の立憲民主党を反面教師にしたらいい。
【プロフィール】
亀井静香(かめい・しずか)/1936年生まれ。国民新党代表、運輸大臣、建設大臣、金融・郵政改革担当大臣、自民党政調会長などを歴任。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号