国内外で問題山積の日本の政界。しかし岸田政権や現役政治家たちの足取りは重い。政界の先達として、初代防衛大臣を務めた久間章生氏(81)が岸信夫防衛相に提言する。
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政治家であれば自分の意見をもち、それを国民に問いかけるのが仕事です。意見があるのに、それを言わないのだとすれば、政治家として取るべき言行を取っていないということになります。
しかし、今の大臣たちは自分の意見を出さない。マスコミに叩かれることが多いので、みんな安全運転であたりさわりのないことを淡々と発言するばかりで、言いたいことを言っていない印象です。もちろん、発言が問題視されるかもしれない。だったらその責任を取るのも政治家の仕事です。堂々と責任を取ればよいのです。そうした覚悟を持って、発言をしてほしい。
とくにウクライナ危機にあって岸信夫・防衛大臣が自分の意見を述べたことは私の知る限りない。安全保障担当だから発言を慎重にしようとしているのかもしれないが、やはり大臣であれば、自身の信じるところをはっきり述べるべきだろう。私自身、防衛大臣を務めたからこそそう考える。
現在、ロシアのウクライナ軍事侵攻で西側諸国はウクライナを支持・支援し、日本も足並みを揃えている。こういう状況下で防衛大臣はどう振る舞うべきか。
事はロシアとウクライナの問題であり、日本は当事国ではありません。だから防衛大臣はロシアがどうであるとか、ウクライナがどうであると他国については意見を言うべきではない。
防衛大臣がこうした安全保障の危機にあって向き合い、発信しなければならないのは日本の国民に対してです。国民は自国が同様の状況に置かれたら、どうなるだろうという不安を持っている。だからこそ防衛大臣には、日本の安全保障がどうなっているかを国民に説明する責任がある。
まず、防衛大臣自身、改めて防衛体制を確認する。日本がウクライナのような立場になったらどうなるのかをシミュレーションして、予想される事態を確認します。その上で、安心なのであればそのことを国民に知らせる。不備があるのであればその不備を埋める指示を出す。これが防衛大臣の使命です。
しかし、岸防衛大臣がそういうことをやっているのかは見えません。頭を巡らせているのかさえ見えないし、国民を安心させるような情報発信もない。そうした言動を、防衛大臣には求めたいと思います。
【プロフィール】
久間章生(きゅうま・ふみお)/1940年生まれ。防衛庁長官を2度務め、初代防衛大臣に就任。国際平和戦略研究所会長。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号