総務省は先ごろ、昨年10月1日現在の日本の総人口が、前年比で64万4000人減の1億2550万2000人になったと発表した。減少幅は過去最大で、日本の人口減少がますます加速していることを印象づけた。なぜ人口減少=少子化問題は解決の糸口が見いだせないのか。世界的経営コンサルタントとして活躍し、各国の経済アドバイザーを歴任してきた大前研一氏が、この日本が直面する難問について解説する。
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日本の少子化は今、ものすごい勢いで加速しています。いわゆる第一次ベビーブーム(1947〜1949年)というのは、戦争が終わって、兵隊さんたちが戦場から日本に帰ってきて、子供がたくさん生まれたことがきっかけです(図表1参照)。そのあとに、その方々から生まれた子供たちが結婚・出産の適齢期になって、第二次ベビーブーム(1971〜1974年)が起こりました。
そして、今度はその第二次ベビーブーム世代の子供たちが適齢期になったら生まれるだろうと思っていた第三次ベビーブームは、結局到来しませんでした。つまり、この時期にはもう世の中が変わってしまっていたわけです。この時点で政府は、後述するような大胆な少子化対策を実施しておくべきだったと思いますが、結果的にはこの流れを変えることはできないまま、今に至っています。
1人の女性が一生の間に何人の子供を産むかという統計で、「合計特殊出生率」というものがあります。世界的な比較でもこの数字を使っているのですが、日本は2019年の統計で「1.36」となっています。理屈から言えば、子供の親は2人ですから、出生率が「2」以上でないと人口は維持できません。それが、今は1.36ということですので、今後ますます人口減少が進むのは確実ということになります。