このコロナ禍において“免疫力の向上に役立つ”と喧伝され、ビタミンDのサプリメントが注目を浴びたのは記憶に新しい。しかも、ビタミンDは、皮膚が直射日光に当たることで体内で生成され、食品からの摂取は難しい。サプリメントで補うのがぴったりの栄養素だ。だが、形成外科医の北條元治さんはこのブームに警鐘を鳴らす。
「そもそも“栄養素を単体で摂取しさえすれば健康になる”という考えは間違いです。例えば、“ビタミンB1が不足すると脚気になる”といいますが、厳密には違います。“脚気患者の健康状態を調べたところ、健康な人と比べてビタミンB1の血中濃度が少なかった”が正しい」(北條さん)
ビタミンB1の不足が脚気に深くかかわっているのは間違いないが、原因はそれだけではなく、その他のビタミンの不足や糖質の過剰摂取など、いくつもの要因がある。つまり、たった1つの栄養素だけが原因で病気になったり、反対にサプリメントで1つの栄養素を摂取しさえすれば健康になるわけではないのだ。
特にビタミンに関しては、誤った情報も多い。件のビタミンDも、あくまでも栄養素そのものに免疫力向上が期待できるというだけであって、サプリメントで摂取することが新型コロナの予防になるなどとは、医学的に証明されていない。
もう1つの問題は「海外輸入」だ。国際医療福祉大学病院教授で国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎さんが解説する。
「2007〜2016年、カリフォルニア州公衆衛生局の研究チームが米食品医薬品局(FDA)の『有害な成分の含有が否定できないサプリメント』に登録された776点のサプリメントを調査しました。その結果、大半の商品に、無許可で医薬品の成分が記載のないまま使用されていることがわかったのです」
なかでも「減量」を目的とした317種類のサプリメントのうち、なんと84.9%から、健康被害が報告され米国内で販売禁止になっている「シブトラミン」が検出された。さらに、23.7%の商品には、発がん性が指摘されている販売禁止成分の「フェノールフタレイン」が“混入”していたのだ。「安いから」という理由で安易に海外から輸入したサプリメントは、粗悪品どころか、毒を口に入れている可能性もある。