UFO(未確認飛行物体)問題が再びクローズアップされている。昨年、米当局がこれまで機密扱いとしてきた軍のUFO調査報告を開示。「説明不能」な現象が多数あるとし、ペンタゴン(米国防総省)が調査機を設置することを明らかにした。謎に包まれたUFOは、人類の存続を脅かす異星人の乗り物(エイリアンクラフト)なのか、あるいは政情不安の中で生きる人々の幻想の産物なのか、それとも──。
昨年6月の米当局による「UFO調査報告」公表は、世界に衝撃を与えた。2004年以降、米海軍などから寄せられた目撃情報を精査し、調査対象144件の大半が「説明不能」だと認めたのだ。同11月には米国防総省が目撃情報を調査する部署を新設するとも発表された。UFO問題に詳しい科学ジャーナリスト・高野誠鮮氏が語る。
「第二次世界大戦後、米当局は『ブルーブック』など公的UFO調査機関を立ち上げつつも、『国家安全保障上の脅威となる証拠はひとつもなかった』とし、1969年12月をもって公のUFO調査研究を打ち切りました。ところが、その後も極秘裏に調査研究が進められていたことが、後に情報の自由化法を基にした訴訟などを通じ判明している。今回、米当局自らが積極的に情報開示に至ったのは、大きな意味があると考えます」
自国上空を、「正体不明の物体が自在に飛び回っている」と認めるのは、国防・危機管理上、米国には由々しき問題のはずだ。それでも公開したのはなぜか。
「SNS等で情報が拡散し、『存在を隠し通すことが困難』と判断したからでしょう。近年は米国に限らず、旧ソ連やNATO諸国の要職に就く人々が『UFOと宇宙人』問題に言及することが多くなりました」(前出・高野氏)
2012年には、当時のロシア大統領だったメドベージェフ氏が、露メディアのインタビュー後に「大統領就任直後は『核のボタン』とともに“極秘”と書かれた重要ファイルを預かる。それは、地球に来ている宇宙人のものだ」とオフレコ発言。その時の映像がネットで拡散され、話題となった。
元カナダ国防相のポール・ヘリヤー氏も退任後、「国防相時代には多数のUFOの目撃報告を受けた。自分は会ったことはないが、少なくとも4種の異星人が地球を来訪していると確信している」とし、物議を醸した。高野氏が語る。
「メドベージェフ氏の発言は、カメラがオフになっていると勘違いして、ぽろっと出てしまった本心だと思います。もともと彼は、UFO情報の公表に積極的でしたが、首相時代はプーチン氏から事実上の更迭という処遇を受けました」
第二次世界大戦以降、東西冷戦期を通じて、米ソ両国が『UFO』を国防・軍事戦略の最重要課題としていた痕跡は数多くあるという。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号