昭和を代表するスター・橋幸夫が、来年5月3日をもって歌手活動にピリオドを打つ──。その知らせを聞いて居ても立ってもいられなくなったのが、『週刊ポスト』で「昭和歌謡イイネ!」を連載するクレイジーケンバンドの横山剣だ。大ヒット曲『いつでも夢を』について、橋が語る。【全5回の第2回。第1回から読む】
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横山:作詞の佐伯孝夫さん、作曲の吉田正さん、歌手の橋幸夫さんというゴールデントライアングルが手がけた名曲のひとつが、1962年発売の『いつでも夢を』。橋さんと吉永小百合さんとのデュエットは、国民的大ヒットを記録、レコード大賞も受賞しました。
橋:僕も小百合ちゃんも、あまりに忙しすぎたから、スケジュールが合わず、仕方なくレコーディングは別々だったんですよ。オーケストラも一緒に録音するのが当たり前だった当時においては、常識外れの試みだった。
横山:それはすごい。
橋:実は、2人が初めて会ったのは、レコード大賞の受賞会場だった日比谷公会堂でした(笑)。
横山:生中継では、ほぼぶっつけ本番でデュエットを披露したわけですね。
橋:そうそう。デュエットの場合、普通は間奏のところで互いに目を合わせるじゃない? でも、彼女は僕の顔をまったく見ないんですよ。勝ち気な子だと思ったなあ(笑)。大女優の片鱗を見ましたよ。
横山:当時の『平凡』の人気投票で男性部門は橋さんが、女性部門では吉永さんが、それぞれトップを獲得していました。
橋:年間首位の副賞として、2人に3泊4日の香港旅行がプレゼントされたことがあるんです。
横山:それは豪勢ですね。
橋:旅先では、ちょっとしたイタズラを仕掛けました。ホテルの小百合ちゃんの部屋に内線で電話をかけ、僕がインチキな中国語でペラペラとしゃべり出したら、「え、どなたですか?」と彼女が戸惑っている。しばらくして「橋ですけど」と明かしたら、「なーんだ、やめてよ!」と怒っていましたけどね(笑)。
横山:天下の大スター2人がオフでは、ずいぶんと無邪気な遊びに興じていたものですね(笑)。
橋:息抜きですからね。
(第3回へ続く)
【プロフィール】
橋幸夫(はし・ゆきお)/1943年、東京都荒川区生まれ。1960年に『潮来笠』でデビューし、日本レコード大賞新人賞を受賞。『いつでも夢を』、『霧氷』で2度の日本レコード大賞受賞。現在、“最後のコンサートツアー”で全国を回っている。
横山剣(よこやま・けん)/1960年、横浜出身。1981年にクールスRCのヴォーカル兼コンポーザーに抜擢されデビュー。1997年春、地元本牧にてクレイジーケンバンド結成。これまでに数多くのアーティストにも楽曲を提供している。
構成/下井草秀 撮影/内海裕之
※週刊ポスト2022年5月6・13日号