昨年、アメリカ・国防総省がUFO(未確認飛行物体)について調査する組織を設置し、再びUFOへの関心が高まっている。そうした中で注目されているのが、「フー・ファイター」の存在だ。第二次世界大戦中、連合国軍の戦闘機パイロットが欧州、太平洋上空で目撃した“正体不明の飛行物体”を指す用語である。当時の戦闘機では考えられない高速、不規則な動きで飛行、時には哨戒・迎撃にあたる戦闘機を追尾する動きもあり、連合国軍パイロットには「ナチス・ドイツの新兵器」を疑う声もあった。
開戦当初、ドイツの工業力、軍需産業は世界有数のレベルにあり、連合国軍のパイロットは“得体の知れない”フー・ファイターとの遭遇を最も恐れていたとされる。
「フー・ファイターと呼ばれる飛行物体は、実は旧日本海軍のパイロットも目撃しています。通常の戦闘機・爆撃機とは明らかに違い、金属で覆われた球状の物体で、敵対行動や攻撃を仕掛けてくるわけでもない。『自機にまとわりつくように追尾し続けるが、こちらが戦闘行動に移ると急角度で方向転換、たちまち姿を消した』という証言もありました」(軍事ジャーナリスト)
UFO問題に詳しい科学ジャーナリスト・高野誠鮮氏が語る。
「ナチス・ドイツ政権下でV2ロケットの開発に携わったヘルマン・オーベルト博士にも話を聞きましたが、当時のドイツが連合国軍を脅かす軍事技術を持っていたことは明らかです。
フー・ファイターを米国の特殊兵器と考えたヒトラーが、『我が国でも同じ兵器を作れ』と命令したとの証言もあります。だが、水銀を使った技術で重力制御を行なう試作機は完成したものの、実戦投入には至らなかった。旧日本軍パイロットの証言などからも、人類がフー・ファイターを作ったとは考えにくい」
そうした中、米・カリフォルニア州で「ロサンゼルスの戦い」として語り継がれる事件が発生する。
1942年2月、ロス上空に数十機の未確認飛行物体が出現。米軍が対空砲で応戦したが、一機も墜落できず、謎の物体は飛び去ったという。日本軍の関与が否定されると、UFO襲来説が囁かれた。
こうした各種の証言、記録から、少なくとも第二次大戦時代には「未確認飛行物体」が各国に軍事的脅威として認識されていたことがわかる。
大戦後、米ソ両国に残された最大の課題のひとつは、「フー・ファイターの正体解明」にあった。それが、安全保障にかかわる問題と考えたからだろう。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号