長引いた巣ごもり需要で観葉植物や野菜などを育てる“土いじり”にハマる人が増えている。これは、100円ショップをはじめ、さまざまな店で手間いらずのキットが発売されるなど、植物栽培の選択肢が増えたことでハードルが下がり、始めやすくなったことも一因のようだ。
別掲グラフのように、コロナ禍2年目の2021年に家庭菜園を新たに始めた人が約3割もいる(タキイ種苗の調査)。では、どんな園芸ジャンルに興味があるのかと言えば、観葉植物が断トツの結果に(第一園芸の調査)。野菜や草花栽培よりも手軽でハードルの低い植物栽培への関心の高さがうかがえる。
「土や植物に触れるとリラックス効果が生じるのは知られていますが、最近は腸内環境がよくなり、免疫力も高まるなどと論文ベースの情報も紹介され、人と植物の関係性がより深く見直されるようになっています」
そう話すのは、埼玉県吉見町にある『ガーデンセンターさにべる』店長で、園芸家の間室みどりさん。
「そのせいか、百貨店や雑貨店、100円ショップでも観葉植物や多肉植物の小物や栽培キットが売られ、男女問わず、どの世代でも生活に緑を取り込みやすい環境が整ってきています。
また、SNSでインスタ映えする花の写真を共有できることや育て方の情報を自分で調べられること、さらには品種改良により以前よりも植物を育てやすくなり、その選択肢が増えるなど、かつてないほど植物栽培を始めやすい時代になったことは確かです」(間室さん・以下同)
植物を購入するにあたり、初心者のうちは育てやすい植物を選ぶことが重要だ。そこで、育てやすく、いま人気が高い「観葉植物」「草花」「野菜」について、それぞれ見ていこう。
「観葉植物」 空気清浄効果のあるサンスベリアに注目
興味のある植物の1位は?
別掲グラフのアンケートで「興味のある植物」1位となった観葉植物。その購入理由は「癒しを求めて」が47%を占めていた。
「買ってきて部屋の片隅に置くだけで、誰でも手軽に観葉植物に癒される暮らしが始められるのが魅力です。
熱帯産のトロピカルなものも多く、部屋の雰囲気をスタイリッシュにできる観葉植物は、女性はもちろん、20〜40代の男性にも人気です。うちの店ではコウモリランとも呼ばれるビカクシダや、エアプランツ、サンスベリアも好評です。ポトスはNASAも認めるエコプランツで、育てやすい観葉植物の代表格といえます」
老舗花屋の第一園芸によると、育てやすい観葉植物のベスト3は1位ポトス、2位パキラ、3位アイビーの順だという。
また、それ以外では空気清浄効果があることで知られるサンスベリアが人気に。これは、横に広がらずスマートにまとまるため、窓辺やベッドサイドに置きやすく、寝室に置けば寝ている間にたくさんの酸素を放出することから、ベッドサイドプランツとも呼ばれているのだ。
ちなみに、サンスベリアの別名はトラノオで、葉には横縞模様があり、寅年に縁起がいいといわれることも人気に一役買っている。
「育てやすい観葉植物」ベスト3
1位:ポトス
多少水やりに失敗しても乗り越えられる順応力の高い観葉植物。日光大好きだが耐陰性もあり、新聞の字が読める程度の明るさがあれば育つ。
2位:パキラ
観葉植物の樹木を育てたい人におすすめ。適度な明るさがあればどんどん育つ。丈夫で室内でも栽培しやすく、葉も美しい。
3位:アイビー
水のやりすぎによる根腐れに注意すれば、育てやすく、増やしやすい。丈夫なツル植物で、室内だけではなく戸外でも育てられる。
※第一園芸へのヒアリングによる。
「草花」 初心者ならペチュニア、中級者なら改良品種のバラを
手軽に“土いじり”できるというので中高年や女性に人気なのが草花栽培だ。
「いまから夏にかけておすすめなのがペチュニアです。以前は花びらが雨に濡れると枯れてしまったり、高温多湿による蒸れにも弱かったのですが、最近は全部克服したタイプも登場しています。値段は1ポット100〜600円程度で購入できます。選ぶ際には、お店のポップなどに“PW”と書かれたポット苗を選ぶといいでしょう」
PWは、「PROVEN WINNERS(プルーブンウィナーズ)」の略称で、1992年に日米欧豪などの園芸種苗会社7社で発足した、世界中の育種家が育てた高品質の植物を集めた国際ブランドだ。
「ペチュニアの場合、通常、せんてい作業をしないと、形もバラバラで、花も少なくなってしまう。その点、PWのものは、切らなくても水と肥料だけで多くの花が咲くので、手間いらずなのです」
こうした品種改良のお陰で、初心者には難しかったバラなどにも育てやすい種類が誕生している。
「そのほか、夏に向けておすすめの日日草や百日草(ジニア)も、昔に比べると病気に強くなり、日本の高温多湿な環境にも合うように改良された品種も増えています」