昭和を代表するスター・橋幸夫が、来年5月3日をもって歌手活動にピリオドを打つ―─。その知らせを聞いて居ても立ってもいられなくなったのが、『週刊ポスト』で「昭和歌謡イイネ!」を連載するクレイジーケンバンドの横山剣だ。激しく妖しくも華やかだった当時の芸能界のあれこれを、橋と横山が振り返る。【全5回の第4回。第1回から読む】
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横山:地方の公演先では、それなりのお楽しみもあったんじゃないかと思うんですが。
橋:バンドの連中は、楽器を弾きながら、ずっと客席の女の子を品定めしてるわけ。ステージが終わると、即座にその子のところに駆けつけ、「夜の何時に、〇〇旅館に来てくれ」と逢引の話をパッパッとまとめちゃう。
横山:うわあ、役得ですね。バックのミュージシャンですらそれだけモテたのなら、主役の橋さんは、さぞかしウハウハだったんじゃないですか? 最高の10代ですね!
橋:いやいや、18や19だった自分が一番遊んだっていいはずなのに、そうは問屋が卸さなかった。
横山:えっ、うまい話はなかったんですか?
橋:付き人として、僕に同行していたのが、実の姉でして……。バンドのメンバーが「一緒に遊びに行こうよ」と誘ってきても、「絶対行っちゃいけません」と僕を止める。楽屋にだって、女の子なんかひとりも入れないんですから。その間、僕以外のみんなは、いろいろと羽を伸ばしていたみたいですけどねえ。
横山:その間、橋さんは何をしていたんですか。
橋:はさみ将棋をやっていました(笑)。私の青春、真っ暗ですよ。姉貴に見張られる生活は、都合4年間も続きました。その姉貴、おかげさまで80過ぎた今も、ピンピンしてますけど(笑)。
横山:お姉さんから解放された後は、自由を謳歌なさったことでしょうね。
橋:まあ、ご想像にお任せします(笑)。その頃からは、村田英雄さんを始めとする先輩方が、お座敷に連れて行ってくれるようになりました。
横山:楽しそうですね。
橋:いろいろと勉強させていただきました(笑)。それに比べ、最近の若いタレントはかわいそう。だって、マスコミの監視が厳しくて、人生で最もモテる盛りの時期に、自由に遊べないんだから。