前方除圧固定術は2つの頸椎間の椎間板を取り除いた後で固定するため、関節として動く場所を1か所治療すれば5つの関節が、2か所の治療では4つに減る。そのせいで他の頸椎に負担がかかり、別の箇所でも頸椎変性症が起こりやすくなる可能性もある。
そこで頸椎を固定しない頸椎人工椎間板置換術が登場した。首の前方を切開し、神経の圧迫を取り除くまでは前方除圧固定術と同じだが、椎間板を取り去ったスペースに可動性を持つチタンやプラスチック製の頸椎人工椎間板を留置する。これは頸椎の可動性を保持して隣接部の障害を防ぐ目的で開発され、自然に近い首の動きが可能となった。
「この治療は日本では2017年に保険適用になりましたが、当初1年間は認可された施設だけで行なわれました。現在は医師の基準を満たし、講習会を受講した施設での実施が可能となっています。対象は骨や椎間板の変性が比較的少ないなど限定されており、適さない症例に実施した場合には不具合が生じる可能性もあります」(尾原准教授)
アメリカでは10年以上前に導入されたが、現在の実施数は前方到達法の5%程度だ。
治療を希望する場合、専門医とよく相談することが重要で、それが治癒の第一歩となる。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2022年5月6・13日号