今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、O157に代表される「腸管出血性大腸菌感染症」についてお届けする。
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新緑の季節、野外でバーベキューを楽しむ人も多くなるこの時期は、腸管出血性大腸菌感染症が心配になります。連休前の講義では、学生さんに「肉は“よく焼き”にして、肉用と食べる箸を分けなさい」などと注意しています。
腸管出血性大腸菌はO157などが有名ですが“毒素”を産生して、出血を伴う腸炎や、溶結性尿毒症症候群など重篤化し死亡することもある重大な合併症を起こしたりする怖い細菌です。
2011年には、生肉のユッケで死亡事故が起きました。生肉、生レバーの摂取は避けたいです(豚と牛の生レバーは飲食店での提供が禁止されています)。また、50個から100個程度の極めて少ない菌数でも感染が成立しますから、生肉に使った箸で口にものを入れるのは厳禁なのです。
そして、この菌には水の中で長期間生存する性質があります。1990年には埼玉県の幼稚園で井戸水が原因でO157の集団感染が起こりました。井戸水の適切な管理も必要なのです。
この菌に汚染された食品や水などから人の口に入ると、通常3~4日の潜伏期を経て、激しい腹痛を伴った水様便が出て発症します。続けて著しい血便となることがあり、血便は徐々に血液の量が増して、便の成分が少なくなります。さらに患者のうち6~7%は下痢などの症状が出てから平均7日(2週間以内)で、前述の溶血性尿毒症症候群や脳症などの重篤な病気に進行することがあります。大事なことは自分の判断で下痢止めを飲まないで、速やかに医療機関を受診することです。