新型コロナ禍前の2019年に出生数が86万人へと大幅減少したことが「86万人ショック」と報じられたが、2021年には新型コロナ禍の影響を受けて、従来の予測よりも18年も早く出生数が75万人に減少する「75万人ショック」に見舞われた。ますます加速する少子化問題にどう対するか? 海外での少子化対策にも詳しい大前研一氏が解説する。
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男女・年齢別の人口構成を表わす人口ピラミッドというものがあります(図表1参照)。この人口動態だけは、戦争や大災害でもない限りだいたい将来がわかります。
これが2010年、2030年と来て、2050年となると、日本で一番人口の多いピーク年齢が80歳ということになります。さらに、2065年にはもう若い世代がほとんどいないので、それこそ自衛隊、消防、警察といった国や地域の支え手が全く集まらず、工場だって人手不足で成り立たないという状況になると予想されます。こうした深刻な近未来が見えているのに、政府や行政は構造改革と呼べる政策に何も取り組んでいません。
ここで、日本の生産年齢人口に注目してみます。これまでは「15〜64歳」が生産年齢と言われていましたが、実際には15歳から働き始める人は少なく、大学まで進学する人が多くなっています。そこで、22歳までは生産人口に入れないほうが現状に合っていると考えられます。
その一方で、中高年に目をやると、新しい法律(改正高年齢者雇用安定法)によって、希望する社員は70歳まで定年を引き上げられるようになりました。というわけで、生産年齢を「22〜70歳」として計算し直すと、2015年時点の数字で、とりあえず261万人ぐらいの生産人口の増加が見込まれます(図表2参照)。ただし、これも2025年時点の推計だと143万人程度の増加になって、70歳まで引き上げた効果というのはすぐに小さくなってしまいます。それでも、とりあえずは100万人ぐらいは助かるということになるかと思います。