地上波のドラマは視聴習慣と切り離せない部分もある。作品が切り替わる際に視聴者が“比較”してしまうこともやむを得ないだろう。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。
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今週 5月4日、NHK総合で『カムカムエヴリバディ』の総集編が放送されました。「安子編・るい編・ひなた編」という三つの新編集版をあわせると、その長さは何と170分。「別の作品としても楽しめるくらい初めから紡ぎ直した」という力の入れようで「100年の物語と思いがこめられた、カムカム制作チームからの最後のプレゼントです」(制作統括・堀之内礼二郎氏)。というように、いまだに余韻を味わいカムカムロス気分に浸る視聴者もたくさんいるもようです。となれば、自然に比較したくなるのが4月から始まった朝ドラ『ちむどんどん』。
その物語は……本土復帰50年を迎える沖縄が舞台。ヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)はサトウキビ農家の次女で食べることが大好き。父(大森南朋)は逝去し貧しい暮らしを一家で協力して支えています。沖縄が本土復帰した1972年、暢子は高校を卒業して東京へ行き料理人の道へ進み……という展開。
しかし、なぜか毎朝の15分間が長く感じてしまいます。ドラマ世界に没入できず、途中で醒めてしまい、ふと素に戻ると頭の中に「?」が浮かぶ。この疑問符、いったいどこに起因しているのでしょう?
母・優子(仲間由紀恵)が家計のために厳しい肉体労働をするシーン。汚れた顔で肉体労働者の男たちに混じって大きな石を運ぶ……が、すごく重たいはずの石がちっとも重そうに見えてこない。まるで紙か何かで作ったギミックのようで、「苦労する母」というコントのように映って困惑しました。そこまで母が苦労している理由は、残された借金のせいです。
食い扶持を減らす目的で4人兄妹のうちの一人が東京の親戚の元へ行く話になり、暢子がバスに乗りこむ。しかし、突如「嫌だ」とバスから駆け下り引き返し「みんなでシアワセになろう」。あれほど深刻だった借金問題はどうなったのか。そこからいきなり7年後に飛んでしまい「?」。
長男・賢秀(竜星涼)は母の大変な苦労を間近で見ているのになぜか働かずぶらぶら。昼から酒を飲み一攫千金を夢見るニート的キャラというのも「?」。長女・良子(川口春奈)は短大を出た教師で、服は破れた部分につぎはぎ。金吾(渡辺大知)という男がまるでストーカーのごとくしつこく良子を追いかけ、気持ち悪いとしか言えない。なぜこんな人物をわざわざ設定したのか「?」。
三女・歌子(上白石萌歌)も音楽教師・下地(片桐はいり)に付きまとわれ、家にまでおしかけられる。歌の才能を見込んで、という理由らしいがあまりに関係が一方的すぎ。ギャグのつもりなのか、いったいどこに感情移入すればいいのか「?」。