国際情報

ロシア治安当局、国民を「愛国者」と「裏切り者」に分け“密告社会”再び

開戦当時はロシア国内で激しいデモが起こった(写真=NurPhot/kyodo)

開戦当時はロシア国内で激しいデモが起こった(写真=NurPhoto/kyodo)

「ウクライナ戦争の転換点になる」と言われてきた5月9日──ロシアにとって重要な対独戦勝記念日を迎え、プーチン大統領の暴走はどこへ向かうのか。新たなステージに突入した戦争の展開について、大和大学社会学部教授の佐々木正明氏に話を聞いた。

 * * *
 戦勝記念日のプーチン大統領の演説は、当初のシナリオとしてはウクライナへの「特別軍事作戦」での戦果の報告だった。しかし、その目論見は大きく外れた。

 それでも、「情報の鎖国」状態にあるロシアでは、プーチン氏の高支持率は今後も続くものと思われる。ロシア国民にとって、ソ連崩壊後に祖国の国力を失墜させてきたのはアメリカであり、“欧米の圧力からロシアを守るプーチン氏”は、まだ多くの国民から英雄視されている。

 プーチン氏のウクライナ侵攻を支持しているのは、「ソ連時代を知っている」「情報を国営メディアに頼っている」「現在のウクライナを知らない」という3つの層だ。

 ソ連崩壊が実体験としてある30代後半以上の人は、経済的に疲弊したロシアを立て直したプーチン氏の指導力を見てきた。情報ソースを国営メディアに頼っている地方在住者や高齢者は政府の統制した情報ばかり目にしている。そして、1991年の独立後に民主主義路線を取ったウクライナがロシアとは全く異なる価値観を持つ国だと理解していない人たちもいる。

 反対にスマホで外国の情報に触れ、国際的感覚のある都市部の若者層は不満を募らせている。“情報の鎖国の外”にいる彼らは欧米との関係を絶たれ、留学やビジネスの停止により自分たちの未来への希望を奪われたという気持ちがある。そこから反プーチン運動が再燃する可能性はある。

 ただし、そういった反乱の萌芽を治安当局は見逃さず、ロシアでは「浄化」を進めようとしている。国民を「愛国者」か「裏切り者」かに分け、反政府的な裏切り者には刑罰が科され、社会からも抹殺されかねないという恐怖を植え付けている。国民は反体制の意志をからめとられており、開戦直後に反戦を訴えていた勢力が極端に減ったのは人々が恐れをなしている証拠だと言える。

関連記事

トピックス

タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
まさか自分が特殊詐欺電話に騙されることになるとは(イメージ)
《劇場型の特殊詐欺で深刻な風評被害》実在の団体名を騙り「逮捕を50万円で救済」する手口 団体は「勝手に詐欺に名前を使われて」解散に追い込まれる
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン