腰痛や肩こりは「国民病」と呼ばれるが、同様に多くの人を悩ませるのが「股関節」の痛みだ。厄介なことに股関節の痛みは放っておくと、知らないうちに全身を蝕むリスクもある。そんな“万病の元”を断ち切るにはどうすればいいか―─。
脚の付け根にある左右の股関節は人体で最も大きな関節で、骨盤と大腿骨を繋ぐ“要”。周囲には大腿四頭筋や内転筋などがあり、「立つ」「歩く」「座る」など下肢を大きく動かす際に重要な役割を果たしている。その股関節の軟骨がだんだんすり減って変形したり、骨同士がこすれて炎症を起こしたりする病気が「変形性股関節症」だ。
変形性股関節症の治療は、鎮痛剤で岩美を緩和し、筋トレなどで症状を改善する「保存療法」と、「手術療法」に分けられる。手術は股関節の痛みを根本的に解消してくれる有力な方法だが、理想は、そうなる前に股関節を悪化させないことだ。川崎医科大学附属病院整形外科教授で股関節外科が専門の三谷茂医師が語る。
「ごく初期であれば、変形性股関節症の治療でいう『保存療法』を行なうことで予防することはできます。しかも、筋肉が強く体重が軽ければ軟骨は減らないはずなので、そうした体格管理が股関節症の真の予防になるとも思います」
股関節の状態のセルフチェックができるリストを掲載した。当てはまる症状があれば、予備群として注意が必要だ。では、具体的に何をどうすれば予防になるのか。三谷医師が解説する。
「変形性股関節症の保存療法には『日常生活』『筋トレ』『体重管理』の3つの柱があります。具体的には、股関節の摩耗を防ぐため、痛みを感じる動作をしないようにすること。例えば床から立ち上がる時、股関節にかかる力は体重の6・3倍になるので、椅子やベッドなど洋風の生活様式に変えることで負担を軽減できます。さらに、筋トレで股関節を支える筋肉を鍛えること、肥満度をBMI【体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出される肥満度を表わす指数】27.5以下を目安にすることが柱です」