国際情報

「イルカ兵器」の供給元はどこか 日本からロシアへ「生きたイルカ」の輸出も

(写真/アフロ)

2009年、イルカの飼育施設を視察したプーチン大統領(写真/アフロ)

 水族館で目にするイルカは、愛らしい姿で私たちを楽しませてくれる。大海原を泳ぐイルカは、神秘的なムードを醸し出す。それでは果たして、戦地にいるイルカはどんな役割を担わせられているのか。侵攻が続くロシア近海で確認された「イルカの軍事利用」と日本の関係について、ジャーナリストの竹中明洋氏がレポートする。

 * * *
 ロシアがウクライナに軍事侵攻して2か月あまり。当初は“軍事大国”のロシアが圧倒するとみられたが、西側各国の支援を得たウクライナとの衝突は終わりが見えず、市民の犠牲は増えるばかりだ。

 憲法において、戦争および武力の放棄を掲げている日本は、避難民の受け入れや防衛装備品の供与など、あくまで「後方支援」という形でウクライナを支援してきた。

 だが、日本由来のものが“軍事利用”されているとしたら──。

 4月30日、米CNNテレビが、ロシア黒海艦隊が拠点を置くクリミア半島の要衝・セバストポリ港の入り口に、「イルカ用の囲い」が設置されていることを報じ、世界的に大きなニュースになった。衛星写真の解析から、設置されたのはロシアの軍事侵攻が始まった2月頃だという。

 水族館のショーでお馴染みの愛くるしいイルカだが、体重に占める脳の割合がヒトに次いで大きいとされ、知能の高さはよく知られている。水中を移動する能力も抜群で、時速50kmで泳ぎ、300mの深海に10分間も潜ることができる。

 なぜロシアの軍港にイルカがいるのか。実は、ロシアは軍事目的でイルカを操っているのだ。

 そうした軍用イルカの“供給元”は、ロシア近海で捕獲されたものだけではない。

 日本の財務省の貿易統計に「くじら目、海牛目及び鰭脚下目」がどれだけ国外に輸出されているかという項目がある。それによると、ロシアへの輸出数は、2016年に25頭、2013年に15頭。すべて生きたまま輸出されている。大型のクジラや、ジュゴンなどに代表される海牛目が生体で輸出されることはないため、この数字はそのまま「生きたイルカ」の輸出数と考えられる。

 また、野生動物の国際取引に関する条約であるワシントン条約のデータベースによると、2018年にカマイルカが4頭、ハンドウイルカが3頭、日本からロシアに輸出されている。

イルカを待ち受ける過酷な訓練

 イルカが軍事目的で利用されるようになったのは、約60年前にさかのぼる。アメリカに始まり、ソ連、さらにロシアで進められてきた。

 アメリカで研究が始まったのは、1962年のことだ。1960年代後半にはベトナム戦争にイルカを派遣している。当初は海中に落ちた人や物を捜したり、潜水中のダイバーに物を届けたりする作業が中心だったという。1990年代の湾岸戦争や2000年代のイラク戦争では、港湾や水路にばらまかれた機雷(水中の設置爆弾)の探索や、水中での破壊工作を行う敵ダイバー(フロッグマン)が停泊中の軍艦艇に接近・攻撃しないよう、警戒に使われた。

関連記事

トピックス

被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと住所・職業不詳の谷内寛幸容疑(右・時事通信フォト)
〈15歳・女子高生刺殺〉24歳容疑者の生い立ち「実家で大きめのボヤ騒ぎが起きて…」「亡くなった母親を見舞う姿も見ていない」一家バラバラで「孤独な少年時代」 
NEWSポストセブン
6月にブラジルを訪問する予定の佳子さま(2025年3月、東京・千代田区。撮影/JMPA) 
佳子さま、6月のブラジル訪問で異例の「メイド募集」 現地領事館が短期採用の臨時職員を募集、“佳子さまのための増員”か 
女性セブン
〈トイレがわかりにくい〉という不満が噴出されていることがわかった(読者提供)
《大阪・関西万博》「おせーよ、誰もいねーのかよ!」「『ピーピー』音が鳴っていて…」“トイレわかりにくいトラブル”を実体験した来場者が告白【トラブル写真】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《広末涼子が釈放》「グシャグシャジープの持ち主」だった“自称マネージャー”の意向は? 「処罰は望んでいなんじゃないか」との指摘も 「骨折して重傷」の現在
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
19年ぶりに春のセンバツを優勝した横浜高校
【スーパー中学生たちの「スカウト合戦」最前線】今春センバツを制した横浜と出場を逃した大阪桐蔭の差はどこにあったのか
週刊ポスト
「複数の刺し傷があった」被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバムと、手柄さんが見つかった自宅マンション
「ダンスをやっていて活発な人気者」「男の子にも好かれていたんじゃないかな」手柄玲奈さん(15)刺殺で同級生が涙の証言【さいたま市・女子高生刺殺】
NEWSポストセブン
山口組も大谷のプレーに関心を寄せているようだ(司組長の写真は時事通信)
〈山口組が大谷翔平を「日本人の誇り」と称賛〉機関紙で見せた司忍組長の「銀色着物姿」 83歳のお祝いに届いた大量の胡蝶蘭
NEWSポストセブン
20年ぶりの万博で”桜”のリンクコーデを披露された天皇皇后両陛下(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA) 
皇后雅子さまが大阪・関西万博の開幕日にご登場 20年ぶりの万博で見せられた晴れやかな笑顔と”桜”のリンクコーデ
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
《実兄が夜空の下で独白》騒動後に中居正広氏が送った“2言だけのメール文面”と、性暴力が認定された弟への“揺るぎない信頼”「趣味が合うんだよね、ヤンキーに憧れた世代だから」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン