人気お笑いトリオ「ダチョウ俱楽部」のメンバー・上島竜兵さん(61)の突然の訃報に、芸能界をはじめ、多方面から悲しみの声が上がっている。誰からも愛される人柄だった上島さんとの秘話を、上島さんの初の伝記『これが俺の芸風だ!!』の編集兼構成を担当した、ノンフィクションライターの松永多佳倫氏が明かす。
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初対面は、“竜ちゃん”らしくない竜ちゃんだった。
「あ、よろしくお願いします」
なんだか鳩が豆鉄砲を食らったような顔しながら深々と丁寧にお辞儀をする上島竜兵さんがいた。
今から17年前、上島さん初の伝記『これが俺の芸風だ!!』を編集兼構成することになった僕にとって、初めての出会いは、ギャップの連続だった。「やー」、「クルリンパ」、「ムッシュムラムラ」で一世を風靡していたダチョウ倶楽部の“竜ちゃん”こと上島竜兵はいつも元気いっぱいのニコニコ顔で誰からも愛されるイメージ。だが実際会ってみると、非常に繊細であり真面目で優しい笑みを蓄えながら、いつも穏やかに話してくれた。
書籍化が決定し初顔合わせのときも上島さんは、「これドッキリじゃないですよね。やっぱりドッキリですか!? もしドッキリだとしても本は作りますから」と言いながら、周りの空気をほんわかと温め、居心地の良い空間を自然と作ってくれた。そんな上島さんを見ているだけでとても愛おしい気分になった。
書籍は、カラー写真64ページを掲載し、当時ブログで人気だった上島語録を収録したほか、生い立ちから高校を卒業して芸人になるまでのストーリーを含む自叙伝的な構成。シャイな上島さんは、自分の生い立ちを一生懸命に面白おかしく話してくれるが、最後に必ず「これって面白い!? 面白くないよね?」と勝手にダメ出しをして落ち込む。これも一連のギャグなのかと思っていたが、モノ作りに真剣ゆえの言動だということはすぐにわかった。
編集兼構成の僕に対しても必要以上に気を遣ってくれた。一緒にロケ取材している最中、僕がいろいろ思案に暮れていると、「いつも難しい顔をしてるねぇ。本当は俺のこと嫌いなんでしょ!?」とスッと声をかけてくれる。すでにベテラン芸人として確固たる地位を築いているにもかかわらず、偉ぶらず、謙虚で常に腰が低い。しかし、お酒の席の場では、僕らが求める竜ちゃんの顔を出し、毒舌を吐き出して笑わせてくれた。
竜兵会にも三度ほどお邪魔させてもらった。竜兵会とは、土田晃之、有吉弘行、劇団ひとり、デンジャラス、インスタントジョンソンなどの芸人たちが上島さんを囲んで気分よく飲ませて、最後は上島さんが泣いてお開きという親睦団体。
上島さんは酒を飲むと、毒舌の嵐で人の悪口を言いまくって管を巻く。上島さんが言うものだから悪口も悪意があるようには聞こえない。端から見れば、上島さんの単なるストレス発散に見えるものの、思うに後輩芸人たちの鬱憤を上島さんが代弁することで後輩の溜飲を下げてあげていたのではないか。それくらい気を配ったことができる人でもあった。