大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で上総広常が非業の死を遂げた直後から、SNSでは「#上総介を偲ぶ会」が立ち上がり、いまだに「上総介ロス」という人もいるという。演じたのは、佐藤浩市(61才)。昨年末には歌手デビューを飾り、最新出演作である映画『20歳のソウル』も公開になるなど、60才を過ぎたいまも、新たな活動の場を広げ、注目を集め続ける佐藤に話を聞いた。【全4回の1回目】
佐藤浩市が現れると、取材場所のスタジオは一瞬にして華やかなオーラに包まれた。ソフトハットがよく似合う。ダブルのスーツの着こなしがまたダンディーで、セクシーでもあり、渋くもあり、と見とれていたら、あっという間に撮影タイムが終了。いよいよインタビューに突入した。
「よろしくお願いします」と伝えると、耳に心地のよい声で「こちらこそ」と、穏やかな笑顔を向ける。円熟期を迎えた61才の大物役者はどこまでも魅力的だ。
まずは自身の放つ存在感について聞いてみた。すると腕を組んでしばし考えた後こちらの目を見据えて、
「自分に存在感があるかないかなんてわかりませんね。だってそれは人が感じることだから。でも存在感のある役者を目指して頑張ってきたのかもしれないし……。とにかくそう言っていただけるのはうれしいです」と語る。驚くほど謙虚なのだが、三谷幸喜脚本による大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)でも、圧巻の存在感で視聴者の心を鷲掴みにした。
「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府初代将軍・源頼朝のこと。ドラマは主人公の北条義時(小栗旬)が頼朝(大泉洋)のほかの家臣たちとパワーゲームを繰り広げ、武士の頂点に立つまでの成長を描きながら展開していく。その中で佐藤が演じたのは、坂東随一の大豪族・上総広常(かずさ・ひろつね)だ。