テレビと反社との関係が問われる問題がまたも浮かび上がってきた。日本格闘技史上最大のビッグマッチ──その生中継を目前に、関係者の驚くべき騒動が噴出した。
「警察が捜査している」
1か月後に迫った「世紀の一戦」に、格闘技ファンは待ちきれない思いだろう。6月19日、東京ドームで開催される那須川天心と武尊(たける)の「キックボクシング頂上対決」は、長年両者が対決を望みながら、所属団体の違いからなかなか実現しない夢のカードだった。
それを実現に導いたのが、実行委員を務める格闘技団体「RIZIN」代表の榊原信行氏(58)である。格闘技ジャーナリスト・片岡亮氏が言う。
「榊原氏は、那須川選手をRIZINに参戦させ、プロボクシング五階級制覇のメイウェザーとマッチメイクするなどして一躍スターに押し上げました。K-1のトップである武尊選手との一戦は、団体間の交渉の末にフジテレビの生中継を実現させた。複雑な交渉をテレビを中心にまとめあげるのがプロモーターとしての榊原氏の手腕です」
チケットの最高額は300万円だが、会見に臨んだ榊原氏は「間違いなく完売する」と自信を見せ、事実、前売り券は即完売となった。だが、そのドリームマッチの開催さえも左右しかねないトラブルが榊原氏に起きているという。その中身に触れる前に、まずは榊原氏の弁だ。
「今、警察が入って捜査していますから、何も言えないんです」
電話での本誌・週刊ポストの直撃に詳細は語らなかったものの、警察沙汰となっていることを認めた。
そのトラブルとは、榊原氏に接触したX氏というジャーナリストとの間で起きた。その一連の経緯が犯罪行為にあたるとして、榊原氏はX氏を刑事・民事で告訴するべく動いているというのだ。
では、X氏は榊原氏に「何」を取材したのか。X氏が記事の材料として榊原氏に示したのは、榊原氏の会話が収められたとされる音声データだった。このデータは格闘技業界関係者の間で出回っていたとされるもので、それを入手したX氏は昨年12月、この会話の内容について聞くために榊原氏と面会したという。X氏に経緯を訊ねた。
「榊原氏はその場で、音声の出所や(私にデータを提供した)情報源をさかんに聞いてきました。その後、音声データを送ると、榊原氏は記事を止めるなら、500万円を支払うと言ってきたのです。
私ではなく、私の情報源が拡散させることを恐れていた様子でした。私は500万円を現金で受け取り、情報源にそのまま渡しました」
X氏は「金銭は『口止め料』という認識で、支払いは榊原氏の申し出だった」とするものの、金銭を受け取って記事を止めたのなら、もはやそれは「取材」とはいえないだろう。榊原氏は「犯罪行為」と受け止めたようで、「後に榊原氏から、恐喝の疑いで刑事告訴を検討していると通告された」(X氏)という。