高齢になってからの骨折は、がんや脳卒中と同じくらい高齢者の生活の質(QOL)を低下させ、最悪、生命を脅かす場合があるという。日本骨粗鬆症学会は、こうした命にもかかわる骨折を『骨卒中』と呼び、多方面に警鐘を鳴らしている。
歳を重ねると骨卒中に陥りやすくなるのには理由がある。鳥取大学医学部保健学科教授の萩野浩氏が語る。
「海外の研究では、1度手首を骨折した人は再び手首を骨折するリスクが3倍以上になるだけでなく、手首とは離れた大腿骨近位部の骨折リスクが約2倍に上昇するという結果が出ています。
同じ研究では、背骨を骨折した人が再び背骨を骨折するリスクが4.4倍に達し、さらに大腿骨近位部を骨折するリスクが2.3倍にまで上昇するとの報告もされた。また、近年の別の研究では、骨折の回数が多いほどその後の骨折が増えることも分かっている。
こうしたひとつの骨折が次の骨折を引き起こす『ドミノ骨折』は歳を重ねるほど起きやすく、体の衰弱を招きます。その結果、骨卒中が引き起こされるのです」
たとえば、50代で手首を骨折し、60代で背骨、70代で大腿骨近位部を骨折して、寝たきり一直線──そんな負の連鎖が珍しくないという。
なぜ、ドミノ骨折が起きるのかは明確には分かっていないという。
「ただ確実に言えることは、ドミノ骨折によって筋力などの運動機能が低下を続け、活動量が減少して体全体が衰弱するということです」(萩野氏)