高齢になってからの骨折は、著しく生活の質(QOL)を低下させ、最悪、生命を脅かす場合もある。日本骨粗鬆症学会は、こうした命にもかかわる骨折を『骨卒中』と呼び、多方面に警鐘を鳴らしている。
どんな人が骨卒中になりやすいのか。まず気を付けたいのは、「骨粗しょう症」のリスクがある人だ。骨粗しょう症とは、新陳代謝のバランスが崩れることによって、骨の強度が低下して骨折しやすくなる状態のこと。
一般に、女性の患者が多い(閉経を迎えると女性ホルモンが減少するため)と言われているが、男性も安心はできないという。鳥取大学医学部保健学科教授の萩野浩氏が語る。
「骨粗しょう症の推定患者数は1280万人で、うち男性300万人、女性980万人とされていますが、高齢化によってこの先は男性患者が増加すると予想されています。
中高年の男性は加齢とともに骨の強度を示す『骨密度』がじわじわと低下するので、一見骨太の男性でも60代後半になる頃には、骨密度が若年期から大きく減少します」
骨粗しょう症が原因で骨折したことのある男性には「危険信号」が点灯する。骨粗しょう症専門外来を設置している「むつみクリニック」の金光廣則院長が語る。
「骨粗しょう症で脆くなった骨が折れる『脆弱性骨折』を起こした方は、骨卒中のリスクが高い傾向にある。その場合、重症化を防ぐための検査や治療が推奨されます」
骨粗しょう症患者以外も注意が必要だ。萩野氏が語る。
「過去に脳卒中を発症して後遺症の麻痺が起きた場合、その部位の骨密度が大きく減って、骨折しやすくなります。また糖尿病や慢性腎臓病を患うと、体内の酸化ストレスが上昇して『骨の質』が低下するので同様にリスクがある。骨密度は医療機関で測定できますが、『骨の質』は未解明な部分が多いので、糖尿病や慢性腎臓病の患者は特に気を付けたい」